2014 Fiscal Year Research-status Report
近代中国ムスリムのクルアーン解釈――王靜齋『古蘭經譯解』の研究
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26770241
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 竜也 京都大学, 白眉センター, 助教 (40636784)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国近現代史 / 宗教思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際会議“Wild Spaces and Islamic Cosmopolitanism in Asia,” National University of Singapore, January 14-15, 2015に提出したフルペーパー“Swaying between the Umma and China: the Survival Strategies of Hui Muslims during the Modern Period”において、近代中国ムスリムの代表的知識人、王靜齋の主著『古蘭經譯解』をめぐり、次のような成果を示した。第一に、『古蘭經譯解』の三つの版本(1926年ごろ完成の甲本、1937年から38年にかけて作成された乙本、1938年作成開始、1946年刊行の丙本)を、そのアラビア語・ペルシア語原典と比較しつつ、彼の「ウンマ」に関する観念を析出した。そして、王靜齋が、中国ナショナリズムへの配慮から、国民国家の枠を越えた全世界のムスリムを一つの共同体(ウンマ)と表明することを忌避していたことを明らかにした。第二に、『古蘭經譯解』の三つの版本から、彼の「イスラームの家」に関する言説の変遷を確認した。それにより、王靜齋が、1937年以来の抗日戦争を「防衛ジハード」とする言説に呼応して、中国を「イスラームの家」(ジハードで防衛すべき、ムスリムの領土)とみなした、と論じた。第三に、以上のような王靜齋によるクルアーン翻訳・注釈を、当時の中国ムスリムの言説空間に位置づけるべく、彼らの代表的な定期刊行物『月華』を分析した。結果、『月華』では、蒋介石の同化政策が顕著となる1939年7月以降、中国ムスリムはムスリム共同体(ウンマ)の一部であると示唆されるようになることが、判明した。かくして、王靜齋が、ムスリム共同体の存在を認めなかった点で際立つことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
『古蘭經譯解』の「ウンマ」や「イスラームの家」といった、「聖戦」に関する言説が、近代中国の歴史的背景に応じて展開されていたことを明らかにし得たものの、そこに西南アジアのイスラーム改革思想がどのように絡んでいたかということを解明するまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、王靜齋が『古蘭經譯解』で「家族関係(結婚、離婚、相続など)」に関するイスラーム法の規定をどのように解釈していたかを検討する。また、同書の「聖戦」に関する言説の背景、とくに西南アジアのイスラーム改革主義との関係についても、引き続き考察を加える。
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Research Products
(5 results)