2015 Fiscal Year Research-status Report
満鉄農事試験場からアジアへの知識の拡散―寄贈資料と接収資料から見る影響分析
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26770246
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
湯川 真樹江 学習院大学, 付置研究所, 研究員 (20709000)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 農業技術 / 普及システム / 従事者 / 聞き取り / オーラルヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度は海外での報告と内外研究者との交流を積極的に行ったため、今年は国内において集中的に資料収集を行った。とりわけ、先行研究への理解を促進するために、歴史研究書のみならず、オーラルヒストリーに関する研究書を精力的に集めた。 申請者がオーラルヒストリーに着目したのは、様々な満洲経験者(農業従事者を含む)に直接お会いし、当時の状況や個人の考えを聞きとる中で、如何に歴史が語られていくのかを学術的側面からも十分に理解する必要があったからである。戦前の日本人と中国人の「語り」はそれぞれに特徴があり、話された内容を鵜呑みにするのは避けねばならなかった。 申請者は独自にオーラルヒストリーに関する書籍を購入したのみならず、それに関する研究会やシンポジウムにも積極的に参加し、学術的知識の獲得をめざした。その成果もあり、今年9月にはオーラルヒストリーに関する研究報告を行う予定である。 また、史料の購入も積極的に行った。とりわけ中国から1950年代の農業技術に関する史料を購入し、申請者の研究関心である「農業技術の伝播」状況を確認した。その結果、中国東北地域でも戦前日本が設立した農業技術の普及システムを利用していることが明らかとなった。普及システムの名称は異なるものの、推奨される品種や指導内容は同じであった。おそらく、技術指導員も戦前と変わらない顔ぶれであると推測するが、それについては現地での聞き取りを今後も継続して行う予定である。また、奨励する技術や機械は年代ごとに変化していくので、それについても細かく分析していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度は、学習院大学での通常勤務に加え、非常勤講師(中国語)の業務も担当していたため、研究時間の確保が前年度にくらべて減少した。そのため、まとまった時間を取ることができなかったので、海外での報告や調査をする機会をあまりもてなかった。 しかし、東京で研究業務を遂行するために、書籍を積極的に購入した。書籍から学んだ成果は着実に現れてきている。とりわけ、オーラルヒストリー研究への探求を深めたために、満洲体験者の話を客観的に聞き取ることができた。 研究計画書提出時には、前年度海外調査を積極的に行う予定ではあったが、結果的にオーラルヒストリーの理論を十分に学ぶことが出来たのは思わぬ収穫であった。 また、前年度に集中して集めた国民党関係資料(台湾・中央研究院近代史研究所所蔵)は膨大な量であるが、それに対する読解も進んできている。5月には日中韓農業史学会(南京農業大学)にて、国民党関係資料から確認できる農事試験場の接収状況について報告した。報告は中国からの研究者の関心を集め、本研究の進捗が期待されていることを知る機会となった。とりわけ、国民党接収下の農事試験場では技術員が戦前と変わらぬ高待遇を受け、研究書の翻訳(日本語→中国語)を進めていたことについては、農業史研究者にとっても興味深かったようである。 この成果をもとに、今年度は精力的に一次史料の調査に邁進したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、一次史料の調査に取り組む予定である。これまでも満洲経験者への聞き取りを通して、一次史料の提供を受けてきたが、今年度はとりわけ農事試験場所有の史料(報告書、刊行物など)の確認、調査、データの獲得に取り組みたい。とりわけ、次の2箇所の資料館を中心に調査を進める。 1.公主嶺農事試験場 公主嶺農事試験場では、図書館での刊行物の閲覧が可能で撮影も自由である。そのため、今年は精力的に資料閲覧を行う。農事試験場では公開資料と内部資料がある。この図書館では内部資料の閲覧も可能である。そのため、直接図書館を訪問して閲覧することが重要である。 2.アメリカの各種図書館 アメリカにはGHQが接収した資料が残されている。まずは資料の所蔵状況を把握しながら各地の研究者との交流を深めていきたい。これまでの先行研究ではアメリカ関係資料はほとんどフォローされていなかったため、この資料群を活用し農事試験場の接収状況を明らかにすれば、新たな知見の獲得が可能である。
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Causes of Carryover |
前年度は前述のとおり、各地に赴き調査をする機会があまりなかったので、書籍の購入を中心に研究を進めたため、結果的に次年度使用の研究費が生じた。今年度も効率的かつ効果的に研究を進めていきたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は前年度に出来なかった調査を精力的に行い、史料を収集し、論文を執筆する予定である。特に海外での資料調査を行い、研究資金の効果的な活用とそれに十分に見合った研究の成果を出していきたい。
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Research Products
(3 results)