2015 Fiscal Year Research-status Report
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26770248
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
太田 麻衣子 国士舘大学, 文学部, 講師 (10713547)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 楚 / 楚文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度には、まず江淮地区から出土した春秋戦国時代の墓を主とする資料の収集・分析を行った。とりわけ安徽省淮南市や江蘇省揚州市など、楚の東遷において「重要な地点」における墓葬の変遷をたどり、楚の東遷によって在地の墓葬にどのような変化が生じたのか、墓葬の変遷と文献資料からうかがえる政治状況とにどのような関連性を見いだせるのかを明らかにしようとした。しかし、当初の見通しよりも有益なデータを収集できず、具体的な様相を明らかにするまでには至らなかった。上記「重要な地点」は、文献資料の記述から割り出したものだが、墓という考古資料を収集するまえから「重要な地点」とそうでない地点とを区別していたことは、大きな誤りであった。今後は地点ごとにあらかじめ差異を設けずに調査していく必要があるが、現状ではデータ収集に終始してしまい、なんらかの結論を導き出せる見通しが立てられない状態にある。データ収集中に、漢代の墓から有益なデータを見いだせる可能性に気づいたため、データ収集は継続して行っていくものの、研究の主体を別の手法からのアプローチに切り替えることにした。 そこでつぎに、春秋戦国の楚と秦末漢初の楚をつなぐ東遷後の楚の実態について解明すべく、文字資料を中心とした研究を行った。東遷後の楚について伝世文献の述べるところは極めて少ないが、出土文字資料には東遷以前と以後の楚の差異を比較する際に有用なものがあり、また東遷後の楚自体に関する記述も多少はあることがわかった。 これまで本研究では主として春秋戦国時代に目を向けてきたが、平成27年度に行った研究により、楚文化の影響力を把握するためには漢代にも目を向ける必要があり、楚文化を構成する一要素も、漢代に成熟していった可能性について見当する必要性に気づいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の見通しより有益なデータが集まらず、研究手法の見直しに大幅な時間を割いてしまった。試行錯誤するうちに得られた新しい知見はあるものの、業績になるかたちで成果を発表するまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
出土文字資料は多くの研究者によって解読が進められている。それら先行研究に基づきつつ、独自に出土文字資料の解読を行い、伝世文献・考古資料なども利用しながら、キーパーソンとなる春申君を軸に、東遷後の楚の実態解明を行う。春申君に関する史料は物語性が強く、そこからどう史実を抽出するかには注意が必要だが、この点については、本研究課題とは別に行っていた『史記』に関する研究での成果が応用できるのではないかと思われる。 また、これまでは春秋戦国時代の墓やその副葬品から楚文化圏の形成や拡大について明らかにしようとしていたが、平成27年度における研究により、その手法には行き詰まりを覚えるようになった。そこで、先行研究に鑑み、『楚辞』や楚鏡を手がかりとして、漢代も視野に入れたうえで、楚文化の形成と拡大について検討していくことを試みてみたい。
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Causes of Carryover |
発注済みの書籍が年度内に届かなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍購入代として使用する。
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