2014 Fiscal Year Research-status Report
西アジア北端の農耕起源をさぐる:穀物加工と貯蔵の考古資料の通時的分析
Project/Area Number |
26770265
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
門脇 誠二 名古屋大学, 博物館, 助教 (00571233)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 先史考古学 / 農耕起源 / 西アジア / コーカサス / 新石器 / 穀物貯蔵 / 家畜ヤギ / 古代DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
目的と計画:本研究の目的は、現在の人類にとって主要食糧であるムギ類の栽培やヒツジ・ヤギ・ウシなどの飼育が起源した西アジアで遺跡調査を行い、農耕牧畜が周辺地域へ拡散していったプロセスを考古学や関連諸科学の方法を用いて解明することである。この目的のために、西アジア北端に位置するコーカサス地方で古代農村遺跡の調査を行い、得られた標本を用いて、特に穀物加工と貯蔵活動の研究を計画している。平成26年度は以下の成果をあげた。 遺跡調査:コーカサス地方最古の農村遺跡であるハッジ・エラムハンル・テペの発掘調査を9月に行った。アゼルバイジャン科学アカデミーと東京大学との共同調査である。2012年から遺跡中央部において発掘調査を進めていたが、それを継続した。その結果、10m×10mの発掘区において約2mの人工堆積物が調査された。その中では、泥レンガ壁の住居やそれに付随する炉や貯蔵施設を検出した。また、住居内外の堆積物に含まれる古代の道具(石器や土器、骨角器)や食物残滓(動物骨や炭化植物)の回収を行った。 標本研究:穀物加工具として使用された石器のリストや属性記録、図化、写真撮影などを行った。また、穀物貯蔵施設の図化と写真撮影も行った。保存状態が良い穀物貯蔵施設の1つの内容物を詳細に調べた結果、ムギの籾殻が集中して保存されていたことが分かった。籾殻の上には、籾摺りや製粉に使用された穀物加工具が2つ置かれおり、当時の穀物加工と貯蔵活動が密接な関連をもって行われた様子を示す証拠の記録化に成功した。 研究発表:穀物貯蔵に関する研究成果を、国際誌Journal of Archaeological Scienceに発表した。また、今年度の発掘調査について一般講演会を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画通りに西アジアでの現地調査を行い研究標本を採取することができた。また、穀物貯蔵の研究に関しては、著名な国際誌への発表に成功した。さらに、研究目的である「農耕拡散プロセスの解明」に大きく貢献が期待される古代家畜ヤギのDNA系統解析の着手にも成功し、当初の計画以上の成果をあげられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もコーカサス地方での現地調査を継続し、研究標本の収集と分析を行う計画である。ハッジ・エラムハンル・テペの調査を継続予定である。万が一、調査地の状況により現地調査が実現できなくなったとしても、日本に収蔵している石器や動物骨を用いて、穀物加工活動や古代ヤギDNAの分析を進めることが可能である。
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Research Products
(18 results)