2014 Fiscal Year Research-status Report
企業倒産事案における解雇規制と裁判所の権限分配に関する比較法的研究
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26780033
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
戸谷 義治 琉球大学, 法文学部, 准教授 (10643281)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 倒産労働法 / 雇用終了 / 会社更生 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、企業倒産に伴う整理解雇について国内の事例について精査するとともに、フランスでの現地調査・聞き取り調査を実施した。 その成果として、8月にソウルで開催された東アジア法哲学会第9回大会、及び第2回日中労働問題シンポジウムにおいて報告(口頭)を行った。 また、日本における整理解雇についても研究を進め、論文を公表した。 特に、東アジア法哲学会、及び日中労働問題シンポジウムにおいては、日本航空(運行乗務員整理解雇)事件及び同(客室乗務員整理解雇)事件の各控訴審判決を受けて、我が国における再建型倒産手続きにおける解雇の効力に関する問題点を、フランス法制と比較しつつ、指摘した。 すなわち、我が国倒産手続きにおいてなされる解雇の効力に関する判断にあたっては、既に研究計画でも指摘したような、倒産手続きを担当する裁判所(更正裁判初等)と通常民訴として解雇の効力について判断する裁判所との権限分配が不分明であるという問題だけではなく、そもそも再建手続きを進めるにあたって、再建計画(更生計画・再生計画)の策定では株主や債権者らの利害は調整されるものの、そこで労働者やその代表者(過半数組合・過半数代表者)を含めた調整がなされない点により大きな問題がある。それにもかかわらず、上記2判決が示すような、再建計画が関係者間の適正な利害調整の結果であって、企業規模の縮小とそれに伴う人員削減が当然に有効であるとする考え方には与することができず、今後は立法論にまで踏み込んだ検討が必要であることが改めて認識された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
日本における文献調査及びフランスでの現地調査は当初の計画通り進展している。 それに加えて、2年目以降に順次実施予定であった成果の公表について、上記の通り国際学会・シンポジウムにおいて口頭報告する機会を得て、1年目における成果を公にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年目においても引き続き日本における文献調査及びフランス法制の調査を実施する。 特に、1年目において比較的順調にフランスにおける人脈の形成に成功したことから、改めてフランスにおける実務状況を含めた検討を進めることとしたい。 また、上述の通り、我が国における再建型倒産と解雇との関係に関する研究においては立法論的検討も不可欠であると考えるに至ったことから、この点についても検討を進める。 以上の検討および第1年目における学会報告等を下に、成果を論文にまとめる作業を加速させることとしたい。
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Causes of Carryover |
物品費の多くについては図書購入に充てることを予定していたところ、1月に発注したフランス、アメリカ、及びイギリスで出版されている書籍について、所属大学が発注した業者が年度末までにそれら書籍を納入することが困難になったとの連絡を受けた。そのため、ひとまず第1年目年度内におけるそれら外国書籍の購入を断念せざるを得ず、その分の物品費を次年度(2年目)に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
他の予算との関係も確認しつつ、年度の早い段階で上記外国書籍を発注し、使用の予定である。
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Research Products
(5 results)