2015 Fiscal Year Research-status Report
企業倒産事案における解雇規制と裁判所の権限分配に関する比較法的研究
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26780033
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
戸谷 義治 琉球大学, 法文学部, 准教授 (10643281)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 倒産と労働関係 / 団体交渉 / 倒産手続き |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、日本国内における企業倒産時の労働関係、殊に労働者と債権者等利益集団との利害調整についての研究・検討を進めた。 特に我が国においては、通常時と同様の団体交渉によって使用者やその権限を引き継ぐ管財人等と労働者が交渉できると同時に、近年の倒産諸法の改正によって、倒産手続きの枠組みにおいて過半数組合等(倒産会社従業員の過半数を組織する労働組合またはそれがない場合に選挙で選定される過半数代表者)に対する情報提供や意見聴取が制度化されている。 しかしながら、両者は並行的に進められるものであって、基本的に相互の影響を持たないこと、また団体交渉は労働組合と使用者もしくは管財人、意見聴取等は裁判所もしくは管財人と過半数組合等との間で行われ、基本的に債権者などの利害関係人との間で有効に調整を行う手段を持たないことなどの問題を指摘した。 また、倒産手続きの枠組みの中で設定された意見聴取等については、用語法を含めて必ずしも通常の労働法との間で整合的に設計されておらず、ある労組が過半数組合といえるか否か、また過半数代表者を選出する母体をどのように設定するかなど、解釈上解決すべき問題に一定の解決を示すことができたと考えている。 今年度研究期間中にもいくつか成果を報告したが、特に10月に開催された日本労働法学会大会の大シンポジウムにおいて上記のような諸点につき報告を行うことができた。準備の過程においても共同報告者らとの研究会において議論を深め、成果は来年度(平成28年度)に公表の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は研究期間3年中の2年目にあたるが、利害調整の視点からいくつかの報告を行ったり、論考を公表するなど、概ね当初計画通りに進展しているといえる。 また、日米中比較労働法を専門とし、倒産法にも詳しい、ロナルド・ブラウン・ハワイ大学教授に聞き取りをするなど、追加的な調査を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き倒産手続きにおける労働関係について、裁判所の役割及び利害調整の視点から、研究を進める。特に平成28年度は比較的長期にわたってフランスでの調査が実施可能となったことから、フランス倒産法制との比較検討を進展させることとしたい。実際に倒産事案を扱う裁判官等に対して聞き取り調査を予定している。 また、研究期間最終年度となることから、これまでの研究の成果を学会等で報告するとともに論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
フランスにおける調査・比較検討について、勤務先大学との関係で、本年度に比べ平成28年度のほうが十分に時間的な余裕を持って現地へ赴くことができることとなった。そのため、本年度に短期間の調査は実施せず、翌年度の費用に充てることとしたいため、差額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
フランスにおいて比較的長期に調査が可能であることから、現地滞在費用及び資料購入経費に充てることで使用する予定である。
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Research Products
(4 results)