2014 Fiscal Year Research-status Report
「均衡の取れた修復的正義モデル」に基づく少年刑事司法のあり方に関する研究
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26780039
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
津田 雅也 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 助教 (80633643)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 刑事法学 / 少年法 / 少年の刑事事件 / 刑事責任年齢 / 少年に対する刑罰 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である平成26年度は、①日本における少年刑事事件の議論状況・問題点の確認とアメリカにおける「均衡の取れた修復的正義モデル」の基礎的・理論的検討を行い、②可能な範囲で成果発表を行うことを計画していたが、これらの2点について下記のような研究実績を上げることができた。 1 研究課題についての基礎的・理論的研究 研究課題である「均衡のとれた修復的正義モデル」を検討する前提として、日本における少年刑事事件の基礎理論について、戦前から現在に至るまでの文献を収集・分析した。そのうえで、アメリカにおいて展開されている5つの「少年司法モデル論」の分析を行った。アメリカ司法省少年非行防止局(OJJDP)により1990年代に提唱された「均衡のとれた修復的正義モデル」に関する基本的枠組みについては、同モデル論の作成に携わったアメリカの少年法学者による基本的文献を分析した。また、同モデル論と並んで現在有力に展開されている「証拠に基づく発達モデル」についても、スコット=スタインバーグによるモノグラフィーの分析を行い、モデル論相互の比較検討を行った。 2 成果発表 研究課題である「均衡のとれた修復的正義モデル」の分析を含む『少年刑事事件の基礎理論』(2015年2月、信山社)を公刊した。同書では、「均衡のとれた修復的正義モデル」をはじめとした5つの「少年司法モデル論」を紹介し、「モデル論」に基づく分析が有用であることを示した(第1章)。そのうえで、当該モデル論を用いて刑事責任年齢(第2章)・少年事件における刑事処分選択(第3章)・少年に対する刑罰(第4章)という少年刑事事件の各局面において少年がなぜ成人とは異なって扱われているのかの説明を試み、少年刑事事件の理論的基礎を示した(第5章)。本書の公刊によって、「均衡のとれた修復的正義モデル」の基本的考え方を紹介し、同概念の本格的分析を行う素地を作ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」において示したように、①交付申請書の研究計画通りに基礎研究および成果発表を行うことができており、②公刊した研究書において「均衡のとれた修復的正義モデル」という概念が、少年刑事事件の分析視覚として有用であること論じることができたため、初年度に到達することを予定していた研究目的については、ほぼ達成することができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書においては、本年度(平成27年度)の研究計画は、①アメリカにおける「均衡の取れた修復的正義モデル」の運用に関する文献調査・実情調査を行うこと、②同調査について文献を公表することを予定している。 本年度は、基本的にはこの方針に基づいて研究を進めていくが、③他のモデル論の分析・比較を行うことを付け加える。その理由は、平成26年度の研究によって、均衡の取れた修復的正義モデルを検討するためには、その他のモデル論の分析・比較、各モデル論が登場した時代背景・各モデル論が先行するモデル論を克服して主張されるに至った経緯などを分析することが重要であることを認識したところにある。なお、この点については、追加的な文献調査を行えば足り、平成27年度の計画への影響はない。
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Causes of Carryover |
①初年度である平成26年度は、基礎研究を行うための文献収集・分析を行い、そのうえで、研究書を執筆する作業を行ったことから、予定より多くの文献を収集するに至らなかったこと、②2年目である平成27年度夏~秋頃にアメリカ出張を予定しており、その前に文献収集等の事前準備をするために研究費が必要であること、③アメリカ出張の旅程が長くなった場合などのために若干の余裕を持たせたかったことなどから、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の研究計画として示したように、①アメリカにおける現地調査のために予算を使用するほか(航空費・滞在費・調査のための物品購入費など)、②モデル論に関する基礎的文献を収集するために(主としてはアメリカ少年司法の基本書・研究書の購入)、初年度の残額と併せた平成27年度の助成金を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)