2014 Fiscal Year Research-status Report
性犯罪者に対する刑事的サンクションについての総合的研究
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26780042
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
甘利 航司 國學院大學, 法学部, 准教授 (00456295)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 刑事制裁 / 社会内刑罰 / 性犯罪 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、2014年度後期から在外研究のため、ドイツに滞在している。そのため、性犯罪者に対するサンクションについてのドイツの文献をいくつか読むことが出来た。近年、ドイツでは、性犯罪についてのディセルタチオーン(博士論文)が多く公刊されており、かつ、それらのほとんどはコンパクトなものではないため、その膨大な情報量はとても参考になった。 そして、何より、2014年12月にフランクフルトにて行われた、CEP(ヨーロッパ保護観察協議会)による、電子監視のカンファレンス(学会)に参加することができた。そこでは、欧米諸国の性犯罪者に対する監視、つまり、GPSを使用した電子監視の実施方法について、実際に使用される機械等も含めて、とても詳しく知ることが出来た。ドイツで開催されたということもあり、ドイツで開始されたGPSを使用した電子監視のパイロット・プロジェクトにつき、知ることができた。ここでは、ドイツにおけるアクチュアルな実情が分かり、更に、人権上の問題をクリアにする方法等の議論が興味深かった。そして、同じくらい重要なのが、ドイツ以外の、ヨーロッパ諸国の現状を知ることが出来たことである。特に、オランダの実施等については、日本においても非常に参考になると思えた。さて、カンファレンスの出席によって、このGPSによる監視が日本でも(法)理論的には導入しうるということが分かった。ただ、同時に、ヨーロッパ諸国の動き(特に、危険な常習的な性犯罪者への対象)は、導入すること・導入すべきこと、そして、それを維持すること・維持すべきことが完全に前提になっているという点に注意が必要である。つまり、そういった目的に合致するように議論が構築されているし、同じことであるが「必要性」がすべてをリードしているのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2014年度は、後期からドイツでの在外研究が開始する関係で、前期において集中して研究することが出来なかった。また、在外研究が開始した後では落ち着いて研究ができると考えていたのであるが、事務的な手続が非常に多く、前期と同様に、適切に研究を進めることが出来なかった。 確かに、ドイツでの調査を行うことはできたとはいえる。例えば、多くの文献やデータの分析はできている。だが、他方で、本研究の主軸となる北米での研究が、文献収集での研究を越えて行うことができておらず、遅れを取り戻す必要が出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
性犯罪者に対するサンクションとして、本研究の柱となる「電子監視」についての研究は、すでに述べたように進めることが出来たのだが、より極端なかたちのサンクションである、「居住制限」そして「登録・通知制度」については、アメリカでの実態調査が全く出来なかったので、来年度に向けての(最大の)課題となっている。 来年度においては、アメリカで行われている「居住制限」そして「登録・通知制度」の研究を(少しでも)進めたいと考えている。というのは、何故、性犯罪者に対しては、そこまでのことをやってよいと考えているのか、そして、何故、そのような制度が一般的に支持されているのかを分析することが―つまり刑事立法論それ自体としても―とても意味のあることだからである。 そして、次の目標は、すでに本研究の行き着く先として想定している、性犯罪者に対する「処遇」の分析である。ほぼ間違いなく、カナダの性犯罪者処遇は世界で最もすすんでいる。そこで、本研究としては、オタワで行われている性犯罪処遇プログラムについて、現地での実態調査を行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、特に多くはなく、3000円弱である。これは、かなり計画通りの出費と言ってよいと思われる。あえて、理由をあげるとすれば、書籍を買う量が、ごくわずか少なかったということである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において、書籍の購入分として利用されることとなる。
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