2015 Fiscal Year Research-status Report
性犯罪者に対する刑事的サンクションについての総合的研究
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26780042
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
甘利 航司 國學院大學, 法学部, 准教授 (00456295)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 刑事政策 / 性犯罪 / 電子監視 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、性犯罪者に対する電子監視(正確にはGPS型監視)についての研究をしているところ、オランダにおけるGPS型監視には、再犯予防効果を含めた、相当にポジティブな効果があることが分かった。オランダは、性犯罪者に対するGPS型監視以外 の電子監視でも、再犯予防効果があるとされているため、その処遇の仕方を分析する必要があると考え、完全にではないが分析した。また、より興味深いのは、DV/ストーカー事案での対処としてのGPS型電子監視の使用について、かなり成功しているところとして登場したポルトガルがある。そして、ポルトガルが再犯率の減少について、成功した理由についての分析を行うことができた。 申請者は、性犯罪を本当に抑止しようとするならば、第一に考えるべきはサンクションではなく、むしろ処遇の充実化をはかるべきだと考えてきたが、それは、本年度においては、より強く意識するようになった。特にカナダで行われている処遇である、サークルズ(CoSA=Circles of Support and Accountability)は興味深いと考えている。サークルズは、非常に効果があるとされているが、これはボランティアを巻き込み、地域社会単位で、性犯罪者の立ち直りを支援するというコンセプトが、対象者をして、自分は孤独ではないということを知り、そして、周りの人・社会のためにも立ち直らなければ、という感覚にして、それが対象者の再犯防止・社会復帰に効果が出てくるのではないかと思われる。サークルズの実施方法等については分析したのであるが、これからは、対象者への「心理的な働きかけ」についての研究の必要性を感じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の前半まで、ドイツのミュンスター大学にて在外研究をしており、そして、帰国後は、ドイツでの研究成果を公にするため、そして、ドイツで学んだ教育方法を実施するため、授業・講義の方法を完全に変えて行うなどしたため、本科研費の研究は遅れてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は、性犯罪者に対するサンクションについては、基本的には使用すべきではなく、使用しないで済むならば、使用しないかたちで制度設計をすべきであると考えてきた。しかし、性犯罪者の再犯率は(窃盗ほど高いということはないが)決して低いものではなく、そして、被害が一度出てしまうとその被害はとても大きい。他方で、性犯罪という名称で簡単にくくることも問題であり、例えば、強姦や電車内での強制わいせつ、そして、覗き見や公然わいせつなどは、相当異なるはずである。そのため、それぞれの罪種ごとに、こまかく、サンクションや処遇内容を考えるべきであり、場合によっては、刑期終了後においても(保安処分として)GPS型電子監視を付することも―法理論としては相当困難であるが―考えうるという結論に達した。 これからは、オランダの議論等を参考にして、サンクションと処遇の組み合わせ方を中心に研究を進めたいと考えている。 また、実体法レベルでの議論については、英米系の議論についての研究に進みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は、9月末日まで、ドイツにて在外研究をしていたため、年度前半に計画通りに、科研費を使用して、研究をすることができなかった。また、書籍等の経費については、滞在していたミュンスター大学に多くの書籍があり、それらを使用することができたため、年度前半においては、書籍等の購入をおさえる動機となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度(平成28年度)においては、4月にラトビアで行われる学会を含め、海外調査をいくつか予定している。また、日本においては、性犯罪規定の改正があるため、国内で開催される学会・研究会にも多く出席することを予定している。そして、研究の最終年度として、文献を完全にそろえたうえで、論文を書く予定であることから、書籍等の購入量が増加する予定である。
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