2015 Fiscal Year Research-status Report
2012年英国金融市場法改革にみる市場志向型消費者保護法の検討
Project/Area Number |
26780055
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
牧 佐智代 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 講師 (40543517)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 消費者信用市場 / ペイデーローン |
Outline of Annual Research Achievements |
1.昨年度の研究計画の実施により、2012年金融サービス法案審議過程において、ペイデーローンによる多重債務問題が一つの重要な背景にあったことが明らかになった。このため、今年度は、ペイデーローン問題に焦点をあてて研究を実施した。 2.ペイデーローン問題は、英国のみならず、米国においても社会問題となっている。そして、これに対処するために消費者信用市場の監督体制について改革が行なわれていることから、米国の法状況についても検討を加えることとした。 3.米国では、各州において、ロールオーバーを一定程度制約するなど、ペイデーローンに対する規制を行なってきた。しかしながら、既存の連邦機関(FRB、OCC等)は、ペイデーローン業者のようなノンバンクに対する規制権限を有していなかったため、銀行かノンバンクかを問わず、包括的な規制的かつ監督権限を有する新しい機関である「連邦消費者金融保護ビューロー(Consumer Financial Protection Bureau/CFPB)」が設立されることとなった。同機関は、「不公正かつ詐欺的(unfair and deceptive)」な慣行に対応するだけでなく、より広く金融機関による「不正な(abusive)」な慣行についても対応する権限を有している(12 USC §5531)。また、CFPBは、ペイデーローンのみならず、クレジットカード、モーゲッジ等、消費者信用市場全体を対象としている。 4.以上の法制度改革の実現に重要な役割を果たしたのが、法学的知見のみならず経済学的知見である。これについては、引き続き翌年度も検討を加えることとする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英国の法状況についての検討をひとまず終え、米国が全く同一の問題を抱えていることが明らかになったことから、米国に目を転ずることとした。これが奏功し、両国の制度比較、法制度構築のためのアプローチの比較といった、興味深い考察が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
米国の消費者信用市場全体を取り巻く法改革の実現に重要な役割を果たしたのが、ペイデーローン問題に関する多彩な研究動向である。そこでは法学による知見のみならず、経済学、心理学、様々な領域の視点からアプローチされている。このため、次年度は、法学以外のアプローチ、とりわけ行動経済学によるアプローチについて検討を加える。
|