2015 Fiscal Year Research-status Report
日本-ASEAN関係の構築:対日不信の制度的緩和に注目して
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26780103
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
井原 伸浩 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (80621739)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 反日感情の経済的要素 / イメージ外交政策の概要 / 福田赳夫の東南アジア訪問の分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度には、外務省外交史料館における資料収集を継続するとともに、アメリカの国立公文書館でも同様の調査を行った。これにより、研究に必要な資料収集は、一応のめどが得られたと考える。 1970年代に日本政府が、ASEANとの対外関係をいかに構築したかを明らかにするという本研究の目的の概要を、平成27年10月に仙台で開催された日本国際政治学会東南アジア分科会に置いて、「1970年代日本の対東南アジアイメージ外交:ASEAN諸国の対日不信に注目して」と題し報告した。ここでは、現地に置いて反日感情が高まった要因を概観しつつ、これを緩和するために、日本政府によって採られた方策を概観した。これをまとめたものも、「福田ドクトリンとASEAN重視政策:望ましく有用な日本人のイメージを形成するために」と題して、編著の一章分としてすでに入稿しており、当該書は、近日発行予定である。 さらに、平成28年3月には、「1970年代東南アジアにおける日本の「経済支配」イメージの再検討」と題する査読付き論文を、『メディアと社会』2016年Vol.8に掲載した。これは、ASEAN諸国における反日感情の経済的原因について、日本の外務省がいかに認識したかを明らかにするものである。ここでは、貿易、投資、援助の三要素から、日本政府が批判を浴びていた要因をとらえつつ、そこから生まれた反日感情には、誤解に基づくものも多かったことを指摘している。 こうした業績に加え、今後は、反日感情が生まれた非経済的な側面に関しても論考を発表する予定だが、これらは福田赳夫首相による東南アジア訪問時に発表された数々の経済協力政策や、ASEAN文化基金の設立等が、いかにこうした反日感情の緩和に貢献するものだったかを明らかにする基礎となることが見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は、学会報告1本、研究論文の発表1本にとどまったため、「やや遅れている」と評価した。理由としては、アメリカでの外交資料収集が、平成27年度の夏休みまで遅れてしまったことにある。 ただし、「研究実績の概要」で記したとおり、1970年代に日本政府が、ASEANとの対外関係をいかに構築したかを明らかにする論考を、編著の一章として執筆、入稿しており、当該書は近日発刊される予定である。さらに、ASEAN諸国の反日感情の原因のうち、とりわけ非経済的な要因を日本の外務省がいかに認識していたかを明らかにする論文を、『国際言語文化論集』第38巻1号に掲載すべく、準備中であり、すでに第一稿は完成している。これらのことから、上記の遅れを取り戻すめどは立ったと考えられる。
これに加え、今年度中には、ASEAN文化基金に関しする論文および、福田の東南アジア訪問に関する論文をまとめ、提出する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究実施計画にあるように、研究成果を国内外の学会で報告し、順次論文を発表する予定である。すでに述べた通り、『国際言語文化論集』や『メディアと社会』といったジャーナルへの投稿を検討しており、その一部は、すでに第一稿が完成している。 これらを実現すべく、昨年度までに収集した日米英豪の外交文書を通読するとともに、インタビュー調査を随時実施している。すでに今年度としては、平成28年4月には、元インドネシア大使で、福田ドクトリンの初稿作成に携わった枝村純郎氏にインタビューを行った。今後も、福田の東南アジア訪問に携わった外務官僚を中心として、インタビューを継続する予定である。 さらに、こうした論文の執筆を通じて、将来、これらの論文を書籍にまとめる際に使用する説明枠組みの構築を図る。研究実施計画にあるように、パワーに著しい非対称性のあるアクター間でいかに協力を実現していったか、それによって当該アクター間の不信緩和がいかになされていったかを概念化していく。現在は、ジャービス、ラーソン、クック、ハーディンおよびレヴィらの理論を参考にしているが、実証研究の結果をこれにフィードバックし、説明枠組みの精緻化を図りたい。
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Research Products
(3 results)