2014 Fiscal Year Research-status Report
被災者の復興予見を考慮した災害復興政策に対する提言
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26780139
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀江 進也 東北大学, 環境科学研究科, 助手 (50633468)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 災害復興 / 災害準備 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は東日本大震災後に収集したサーベイデータに基づき、震災後に福島県から他地域へ避難の有無、避難した場合の機関の意思の有無についてそれぞれの意思決定の主要な要素を考察した。この結果、次のことが分かった。東日本大震災を機に地域住民は地震・津波のリスクと同時に放射線被爆リスクを回避して、よりリスクの低い地域に移動する。しかし、一方で震災以前の居住地に対しての愛着がある場合、また新居住地において教育サービスや医療サービス(公的サービス)のように一定のサーチコストを負う場合は地域間の移動の可能性は低くなる。これらを総じて考えたとき、被災者はリスクの軽減よりサーチコストの増大に対してより大きな注意を払う。よって、ある家計が公的サービスを追いやすいような構成の場合(e.g.児童が多い、高齢者が多い)、地域にとどまる可能性は高くなる(本結果は、馬奈木(九州大学)との共著論文で現在雑誌投稿、改訂中)。さらに、一度地域を離れた被災者については、避難以前の居住地における災害リスクと被爆リスクが高い場合は、帰還の意思は弱くなる。しかし、避難以前の居住地に対してより大きな愛着がある場合、資産を有している場合、あるいは漁業や農業のような、避難前の地元産業に関連している場合には帰還意思を持つ確率が高くなる(Sanaei, Horie and Managi, 2015, SER)。 これらの研究とは別に、公的な災害準備への投資(非常食、飲料水)が、家計レベルでの同様の災害準備への投資に与える影響を、Gaushl (Heidelberg University)と共同で分析をスタートさせている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災が地域経済に与える影響については、分析の第一段階が終わった。すなわち、将来の災害リスクを考慮に入れた地域住民の居住地移転行動についての分析を行った。しかし、将来の被災地の経済に対する期待の形成については、まだ考察が必要であり、この点のついて今後分析を深める。今年度の結果を、今年度実施する市民アンケートに反映させ、新たなデータを収集する。また、災害リスクへの対処、あるいは保険としての災害準備行動についての研究を開始することができたことから、研究計画の進捗はおおむね順調であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、阪神淡路大震災における被災地を対象としたサーベイデータの収集を行う。しかし、現在は震災後20年たっていることから、サーベイの回答者には、過去を思い出すという形での回答になるので、やや困難があると思われる。しかし、可能な限りデータを構築した後、長田区のような地域経済が停滞・沈降した部分に焦点をあてて、被災者が持っていた復興予測と、現実との乖離を定量的に把握・分析する。また、東日本大震災に関しては、被災地域の企業に対するサーベイデータを得られていることから、災害保険に対する今後の加入行動についての分析を進めることを計画している。
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