2016 Fiscal Year Research-status Report
規範への信奉やアイデンティティを考慮する拡張的エイジェンシー理論による会計研究
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26780260
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
若林 利明 早稲田大学, 商学学術院, 助教 (80705666)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 業績評価 / 参加的決定 / 分権化 / インプット目標 / 契約理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度までの研究を発展させ,インプット目標の決定権をエイジェントに委譲する意義を論じた.より具体的には,組織コントロールのためにインプット目標を定めるべきか否か,定めるのであればその決定権をプリンシパルとエイジェントのいずれが有するべきかを計画コストとエイジェントの個人的属性の観点から契約理論に依拠して,2者1期間シングルタスクのLENモデルを用いて論じた.これにより,例えばソフトウェアの製造において,仕様書や工程表をプロジェクトリーダーとシステムエンジニアのいずれが示すべきか,あるいは建物や船舶の建造において,工程表を本社と現場監督のいずれが示すべきか,それとも工程表を組織階層間で明示しないのかを論じることができる. 分析の結果,(1)インプット目標の設定が組織コントロールに対して有用であること,(2)プリンシパルの計画コスト係数を閾値として,インプット目標の決定権の委譲の是非が区別されること,(3)インプット目標に近い努力を投じようとする意欲が低いか,プリンシパルにとって理想的な目標に近い目標をエイジェントが申告しようとする傾向が高いほどボトムアップの目標申告が最善になる範囲が拡大することを示した.この結論は,目標をトップダウンで提示する組織とボトムアップで申告させる組織が併存することの一つの説明となる.またこの結論は,参加的決定に関する会計学の伝統的議論の結論と整合的であるが,結論の根拠が異なる.この意味で,本稿は,組織の分権化の議論に新たな視点を提供した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究成果として2本のワーキングペーパーを公表し、3回の査読付き国際学会での報告、2回のワークショップ報告を行った。これらは既に査読誌への投稿を終えており、着実に研究を進展させている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、研究成果のとりまとめを行う。また、前年度取り組んだアドバースセレクションモデルをさらに発展させ査読誌へ投稿すること、およびマルチタスクのケースへ議論を展開させることが課題である。
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Causes of Carryover |
学内の経理処理のタイミングの都合により生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に支出は完了している。
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