2014 Fiscal Year Research-status Report
精神障害者におけるホームレス問題の実態と支援に関する基礎的研究
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26780322
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
佐藤 絵(清野絵) 東洋大学, 福祉社会開発研究センター, 客員研究員 (00584385)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 精神障害者 / ホームレス / 路上生活者 / 就労支援 / 職業リハビリテーション / 生活困窮者自立支援法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、仮説構築を目的として文献調査および支援者へのインタビューを行った。次に、その結果を受けて問題の予防と解決の方法として、障がい者に対する就労支援について質問紙調査を行った。 具体的内容として第1に、国内外の先行研究のレビューを行った。その結果、ホームレス化とホームレス状態からの脱却の両局面で「労働」が大きく関係しており、したがって問題の予防と解決のためには障がいに配慮した就労支援が有効である可能性を示した。第2に、路上生活者への支援経験がある社会福祉士等7名に対して半構造化インタビューを行った。その結果、病院、福祉施設、路上での実践から精神障がいを持つ路上生活者の存在と支援の必要性が確認された。また、ホームレス化の理由として障がいにより、学校や職場、家族から排除されることと同時に医療や福祉サービスからの排除があることを示唆された。そして、その予防として支援者からの能動的な働きかけや障がいに配慮した情報提供によるサービスへのアクセスへの確保が示唆された。また、問題の予防と解決について、就労を通じた社会的包摂、そしてそのための就労支援の促進が有効であることが示唆された。 第3に、地域障害者職業センター26ヶ所を対象に就労支援についての質問紙調査を行い、14ヶ所(回収率53.8%)から回答を得た。その結果、医療、福祉、教育、労働機関における就労支援の成果や課題が明らかになった。 本研究は、精神障がい者のホームレス問題の予防と解決に就労支援が有効である可能性を明確にした。また、障がい者への就労支援についてその成果と課題を明らかにした。本研究の結果は、平成27年4月に施行された生活困窮者自立支援法について、精神障がい者への支援についての根拠と支援のあり方を示すものである。また、平成27年度からは具体的支援を明らかにする点で社会的意義が大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、精神障がいを持つ人のホームレス化のプロセスと理由、実態、支援の現状・課題を明らかにすることを目的に探索的な調査を行った。具体的には、文献調査、インタビュー調査、質問紙調査を行い、全ての目的に対して質的にその内容を明らかにすることができた。また、効果的支援方法として就労支援に焦点を絞り、具体的な調査を実施できた。このことにより、今年度の目的は十分に達成できたと考える。 また関連する研究成果の公表として、日本社会福祉学会、日本職業リハビリテーション学会、日本精神障害者リハビリーション学会等での学会発表、報告書や紀要等への論文掲載を行った。このことにより、初年度として研究成果の公表は十分に達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画の目的としては、平成26年度に質的に明らかにした精神障がいを持つ人のホームレス化のプロセスと理由、実態、支援の現状・課題を、量的調査により検証するとともに、効果的支援方法の詳細を明らかにしていくことである。 具体的には、支援者や支援施設への質問紙調査、ヒアリング調査を予定している。ただし、研究計画の変更として調査対象については当初想定していた複数機関ではなく調査協力が得られた施設や団体のみを対象とする。理由は、課題として調査対象者の個人情報保護や行政の管轄の問題があり、調査への協力を得られる施設が少ないためである。対策策として、支援団体の支援者に研究協力者となっていただき、実践現場の課題の解決に寄与することで、調査協力を得ることや、関係者からの紹介による調査施設の確保をする予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は研究協力者をおかず一人で研究を行ったため人件費を使用しなかった。また、専門家ヒアリングについては、謝金なしでヒアリングに協力いただいため謝金を使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、質問紙調査、ヒアリング、論文執筆を行うため、物品費、旅費、謝金、その他の部分で助成金を使用する予定である。
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[Presentation] 意思決定支援とICTの可能性2015
Author(s)
小泉隆文、清野絵、宮武孝弥、志村健一、高山直樹
Organizer
日本社会福祉学会関東地域部会研究大会
Place of Presentation
東洋大学(東京都・文京区)
Year and Date
2015-03-15 – 2015-03-15
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