2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26780381
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
廣澤 愛子 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (10345936)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非病理的な解離 / 解離的対処行動尺度 / 信頼性と妥当性の検討 |
Outline of Annual Research Achievements |
解離とは「苦痛をもたらすものを自己から切り離す心的作用」(Putnum,1997)と定義されており、近年、多くの人に見られるようになってきている(岩宮,2009)。昨今の研究から、解離には異なる複数の因子が含まれており、比較的体験頻度の高い因子と、体験頻度が低く不適応につながるような因子との双方が含まれていることが明らかになってきた(福井,2013)。しかし、体験頻度が比較的高い非病理的解離については、先行研究がきわめて少なく、さらに病的解離との関係性も明らかになっていない。そこで本研究では、非病理的解離に焦点を当て、非病理的解離の特性と構造を明らかにすることを目的とした。 まず本年度は、非病理的な解離の尺度を作成した。非病理的解離と病的解離との最大の違いは、非病理的解離の場合、苦痛な体験を意識的に切り離す点である。つまり、非病理的解離はストレスへの対処行動と考えることができるので、この尺度を解離的対処行動尺度と命名した。 そして尺度構成については、いじめ体験時に用いられる解離的行動に関する質的研究(廣澤,2008)と、回避的なストレス対処行動に関する既存の尺度を参照し、苦痛な体験を「切り捨てる」、苦痛な体験と「距離を置く」、つらい気持ちを「割り切る」の3因子と想定し、質問紙調査を行った。 因子分析、及び信頼性・妥当性を検討した結果、想定した通り、解離的対処行動尺度は上記の3因子構造が確認され、3因子の累積寄与率は47.7%であった。信頼性については、α係数が、切り捨て(α = .77),距離を置く(α = .75),割り切り(α = .68)であり、「割り切り」のα係数がやや低いが,項目数が4項目であることを考えると許容範囲と考えられた.妥当性についても、既存のコーピング尺度との相関が確認され、本尺度の構成概念妥当性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
質問紙の配布がやや遅れており、再検査法による信頼性の検討が実施できていない。しかし、今年度前半にほぼすべての質問紙を配布終了予定である。したがって、その後の分析を速やかに実施すれば、今年度中に、作成した尺度の再検査法による信頼性の検討を行うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
解離的対処行動尺度の再検査法による信頼性の検討を行うとともに、既存の尺度との相関を明らかにすることによって、構成概念妥当性についてもより明確にする。 また、非病理的な解離が教育現場におけるいじめ悪質化とどのような関連性があるのかについても、質問紙調査によって明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
パソコンなどの物品について、すでに使用していたもので十分に対応可能であったために、支出を抑えることができた。また、書籍についても予定していたほどの購入の必要性がなくなったために支出を抑えることができた。
これらの理由により、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、データ分析などがある程度進み、研究成果が明らかになってきたので、それらについて積極的に公表していく予定である。特に、Traumaに関する研究が盛んな欧米での学会発表や意見交換を予定しており、それに充てる予定である。
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