2014 Fiscal Year Research-status Report
蛍光と光触媒作用を同時に示すマルチモーダルな光エネルギー変換材料の創製
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26790017
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
竹下 覚 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (90631705)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 蛍光体 / 光触媒 / ナノ材料 / 光物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
蛍光と光触媒作用を同時に有するマルチモーダル光エネルギー変換材料のモデル物質として、Eu3+ドープYVO4を選択し、粒子径約20 nmのYVO4:Eu3+ナノ粒子を水溶液プロセスによって合成した。得られたナノ粒子に対し紫外光を照射することで、Eu3+による赤色蛍光と、有機色素の光触媒的分解作用が同時に発現することを示し、マルチモーダルな光エネルギー変換が起こることを実証した。この際、有機色素にメチルオレンジを選択することで、YVO4:Eu3+の蛍光スペクトル・色素の吸収スペクトル・励起光の3者の重なりが無視でき、色素の吸収に阻害されずに蛍光特性の測定が可能であり、蛍光と光触媒活性を同時に評価できることを示した。 マルチモーダルな光エネルギー変換系において、制御して一方のモードを優先的に引き起こすため、吸収された光のエネルギーが、どんな場合に、蛍光と光触媒作用の両モードに、どのくらいの割合で変換されるか探究した。上記の水溶液プロセスにおいて、仕込みEu/(Y+Eu)比を変えることで種々のEu3+濃度を有するYVO4:Eu3+ナノ粒子を、Y3+⇔Eu3+イオン交換法と組み合わせることでEu3+イオンが粒子表面に局在したナノ粒子をそれぞれ合成した。これらのナノ粒子試料の蛍光量子効率と光触媒活性を定量し、光エネルギー変換モードにEu3+濃度・分布状態が与える影響を探究した。その結果、Eu3+濃度の増大と共に蛍光量子効率は増加し、光触媒活性は低下した。また、Eu3+をナノ粒子表面に局在させることで蛍光量子効率は低下し、光触媒活性は増加した。以上より、蛍光と光触媒作用には相補的な関係があり、Eu3+濃度・分布を変えることで一方のモードを優先的に引き起こせることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であったマルチモーダルな光エネルギー変換モデル物質の合成と測定系の構築を行い、モデル物質を用いてマルチモーダルな光エネルギー変換を実証した。また、光エネルギー変換モードを決定する因子解明のための実験手法を構築し、その取り組みを開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の成果をとりまとめ、学術論文誌に投稿する。 平成26年度に確立した実験手法をもとに、光エネルギー変換モードを決定する因子の解明を進める。吸収された光のエネルギーが、どんな場合に、蛍光と光触媒作用の両モードに、どのくらいの割合で変換されるのかを明らかにするため、下記のようなモデル実験を行う。①光触媒反応は固体表面で起きるため、粒子サイズ(比表面積)の異なるナノ粒子を作製し、比表面積と蛍光量子効率・光触媒活性の関係を定量的に明らかにする。②光触媒反応の酸化還元電位差は光触媒反応速度に影響すると予想されるため、ナノ粒子の組成(YVO4-BiVO4固溶体系など)を変えて電子構造を制御し、電子構造と蛍光量子効率・光触媒活性の関係を定量的に明らかにする。以上の実験によって得られた知見をもとに、光エネルギー変換モードを決定する因子の解明を進め、高効率な蛍光体または光触媒を設計するための指針を構築する。必要に応じ、得られた結果を取りまとめて学会・学術論文誌にて成果の発表を行う。 進行状況に応じ、マルチモーダルな光エネルギー変換材料の応用可能性を追究するため、YVO4:Eu3+薄膜・厚膜を作製し、蛍光によるセンシング作用を有する光触媒材料としてデバイス応用の可能性を吟味する。
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Research Products
(1 results)