2015 Fiscal Year Research-status Report
大気圧下プラズマCVD法によるアモルファス炭素異方性制御技術の開発
Project/Area Number |
26790065
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Research Institution | Kushiro National College of Technology |
Principal Investigator |
齋藤 誠紀 釧路工業高等専門学校, 電気工学科, 助教 (40725024)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大気圧プラズマ / 分子シミュレーション / アモルファス炭素 / プラズマCVD / タングステン / 繊維状ナノ構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大気圧下プラズマCVD法によりアモルファス炭素製膜実験を行う。低圧プラズマと比べて大気圧プラズマのイオンエネルギーが格段に小さいことを製膜に利用する。そして、プラズマ・ジェットの中性ガス圧力を調節することで、製膜時の炭素イオンエネルギーおよびフラックスを変化させ、膜質を制御する技術の開発に挑戦する。真空排気装置が不要な大気圧プラズマ・ジェットを用いた製膜技術を確立することで、製膜に要する時間とコストを抑えることが可能になり、様々な製品の製造コストを抑えることにつながる。さらに、大気圧プラズマ・ジェットの静電探針計測技術を用いてプラズマパラメータを同定し、膜質との関連も調べる。また、分子シミュレーションを用いて膜質とプラズマパラメータの関係を原子スケールで解明し、膜質の制御技術を確立する。 本年度は、まず、メタンガスの排気設備を設置し、メタンプラズマを発生させる環境を整備した。その後、メタンプラズマの点火を確認するとともに、シリコン基板への照射実験を行い炭素製膜を試みた。また、昨年度構築した静電探針計測システムに改良を加え、電子温度の空間分布を得た。この改良により、膜質とプラズマパラメータの関連を調べる環境が整った。また、本年度は、アモルファス炭素製膜以外の応用技術を模索した。タングステン基板にヘリウムプラズマを照射する実験を行い、大気圧下で繊維状ナノ構造が発生する可能性を示すことに成功した。繊維状ナノ構造は、様々な応用デバイスの開発が検討されており、大気圧下で生成可能になれば、製造コストの面から産業応用を加速できると期待できる。さらに、二体衝突近似法にポテンシャル関数を導入した新しい計算技法を確立し、繊維状ナノ構造形成のためのシミュレーション技術開発にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において、平成27年度の実施項目として挙げた四項目について達成状況を報告する。 「1. アモルファス炭素形成の確認」:排気設備の設置が完了し、シリコン基板へのメタンジェットプラズマ照射実験を行った。発生するプラズマは二形態をとることが判明した。一つは、ノズル直上から安定してプラズマが発生する形態、二つ目は、ノズル側面から湾曲するようにプラズマが発生する形態である。前者のプラズマを基板に照射する場合、目視およびSEM像では基板表面に変化が見られないものの、EDSによる成分分析の結果、表面には炭素が多量に存在していることを確認した。一方、後者の場合、炭素を多量に含んだ黒い煤が大量に基板に堆積する。炭素成膜の点では、前者の形態が望ましい。プラズマの形態を完全に制御するには至らないが、バイアス電圧を基板に印加すると、前者の形態が実現しやすくなると分かった。今後、ジェットプラズマ形態の制御法と、発生した炭素膜の詳細な分析が必要となる。 「2. 電子温度・プラズマ密度の測定」:静電探針計測システムを改良し、電子温度の空間分布測定に成功した。具体的には、ファンクションジェネレータと電圧増幅器を新たに設置し、150V、100Hzの三角波を探針に印加した。プラズマ中を探針が移動する間、三角波の一周期毎に電流電圧特性が得られる。プラズマの中心と端での電子温度勾配まで正確に測定できた。プラズマ密度は未計測であり、次年度の課題となる。 「3. イオンエネルギー測定のための理論構築と測定」:予想よりも定式化が困難であることが分かり、理論構築に至っていない。次年度も継続して理論構築に努める。 「4. 中性ガス圧力制御のための改良」:チャンバーの設計・製作は完了し、真空ポンプ、ピラニゲージなど必要な備品もそろっている。次年度、実際にチャンバーを設置し、中性ガス圧力制御を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
メタンジェットプラズマ照射の結果、基板表面に炭素が多量に存在することを確認したものの、安定した成膜には至っていない。今後は、「1.安定したジェットプラズマ生成方法を確立する。」、「2.基板の一部をマスクして成膜し、マスク部と成膜部の厚差をレーザー顕微鏡で測定し、成膜速度を評価する。」、「3.チャンバーを設置し、中性ガス圧力制御を行いながら膜質の向上に努める。」の3点に注意を払いながら膜質の向上に努める。
また、本大気圧ジェットプラズマ装置を用いて、タングステン基板にヘリウムプラズマを照射した結果、タングステン表面に繊維状のナノ構造が発生することを確認した。 真空プラズマの場合、20eV程度の低エネルギーヘリウムイオンをタングステン材に照射すると、ナノメートル程度の直径を有する繊維状綿毛構造が照射面に発生することがわかっている。このようなナノ構造の応用技術が近年活発に議論されている。例えば、綿毛構造は、熱光起電力発電用の太陽光吸収体として期待されている他、光触媒、MEMS技術への応用なども期待できる。多様な応用が期待される中、大面積のナノ構造を低価格で発生させる技術が求められている。真空装置を利用する現在の生成方法では、低価格化・大面積化は難しい。そのため、本研究で用いる大気圧ジェットプラズマ装置で綿毛構造を発生できれば、産業応用につながると期待できる。本研究課題の主目的である高品質な炭素成膜と同程度の学術的価値があると考える。 本装置で発生した綿毛構造は、大気中で生成したため、表面の酸化が著しいことが判明している。酸化を防ぐため、チャンバーを設置し酸素を遮断することが必要になる。本研究で実施している炭素成膜用のチャンバーが利用できるため、本研究では今後、炭素成膜技術の向上に加え、大気圧下でのタングステン綿毛構造発生技術を確立することにも焦点を当て研究を進める。
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Causes of Carryover |
本校会計処理の都合により、差額60,327円は4月の執行となるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
理由に記したとおり、差額はすでに本年度の研究に使用している。
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Research Products
(20 results)
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[Journal Article] Hybrid simulation research on formation mechanism of tungsten nanostructure induced by helium plasma irradiation2015
Author(s)
A. M. Ito, A. Takayama, Y. Oda, T. Tamura, R. Kobayashi, T. Hattori, S. Ogata, N. Ohno, S. Kajita, M. Yajima, Y. Noiri, Y. Yoshimoto, S. Saito, S. Takamura, T. Murashima, M. Miyamoto, and H. Nakamura
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Journal Title
Journal of Nuclear Materials
Volume: 463
Pages: 109-115
DOI
Peer Reviewed
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