2014 Fiscal Year Research-status Report
調和ポテンシャルを伴う非線形シュレディンガー方程式の定在波の解析
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26800074
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
菊池 弘明 津田塾大学, 学芸学部, 講師 (00612277)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リウビル・ゲルファント問題 / 特異解 / 分岐 / 折れ曲がり / 非線形シュレディンガー方程式 / 爆発 / 散乱 / 基底状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は大きく分けて2つの研究を行った。
一つ目は、British Columbia大(カナダ)のJuncheng Wei氏との共同研究によるもので、ある指数型非線形項をもつ楕円型方程式の解の分岐について考察した。これはよく知られたリウビル・ゲルファント問題とよばれる方程式を一般化したものである。方程式にある非線形項の指数をpとすると、pが1のときに相当するリウビル・ゲルファント問題については、これまで多くの研究があるが、それ以外の場合にはあまりないように思われる。ここでは、まず、原点で発散するような特異解が一意的に存在することを証明した。そして、この特異解を利用して、空間領域の次元が3以上9以下のときは、大域的な分岐が無限個の折れ曲がりをもつことを示した。また、空間領域が2次元の場合においても、非線形項の指数pが1より大きいときは、3次元以上のときとは異なるプロファイルをもつ特異解が存在することを証明した。
2つ目は、静岡大学の赤堀公史氏、Victoria大学(カナダ)のSlim Ibrahim氏、明治大学の名和範人氏との共同研究によるもので、非線形シュレディンガー方程式の基底状態より大きいエネルギーをもつ解の挙動について調べた。ここでは特に、2重冪の非線形項で、一つはエネルギー臨界、もう一方はエネルギー劣臨界かつ質量超臨界の場合を考えた。これまで、Nakanishi-Schlag (2010)により、3次元3次のべき乗型非線形項の場合などについては、基底状態より大きいエネルギーをもつ解は、9つの異なる挙動に分かれることが知られているが、ここでは、上に述べた2重冪のようなスケール不変でないような場合においても、振動数が十分小さい場合の基底状態対しては、同じような結果が得られることを証明した。このことをまとめた論文を現在、執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
空間領域が3次元以上の一般化したリウビル・ゲルファント問題については、おおよそ知りたいことが概ね解明できた。また、2次元のときには、まだ未解決であるが、興味深い問題を見つけることが出来た。具体的には、非線形項の指数pが1のときであるについては、特異解は存在せずに、解の分岐も折れ曲がりが一回しか起きないことがよく知られている。しかし、非線形項の指数pが1より大きいと、特異解が存在することが証明できた。このとき、数値計算を用いると、解の分岐は複数回の折れ曲がりをもつ、つまり、正値解が何個も存在することが予想される。現在は、この正値解の多重性を接合漸近展開という方法を用いて証明できないかと試みている最中である。さらに、この方法は、研究計画の一つである、ソボレフ超臨界の非線形項をもつ調和ポテンシャルをもつ楕円型方程式の正値解が幾つも存在すること示す際にも有効ではないかと期待している。
非線形シュレディンガー方程式の基底状態より大きいエネルギーをもつ解の挙動については、9つの異なる挙動に分かれることを証明するのに、前年度まではある技術的な条件が必要であったが、エネルギー臨界の非線形項があることを利用し、これを取り除くことが出来た。さらに、これまでは振動数が十分小さい基底状態を考えてきたが、振動数が十分大きい場合においても、ある程度計算が進み、同様の結果が得られるのではないかと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、一般化リウビル・ゲルファント問題については次のように研究を進めたい。最初に、空間領域2次元における一般化リュウビル・ゲルファント問題の正値解の多重性について調べる。これについては、漸近接合展開という方法を用いることで証明できないかを試みたい。また、この方法は、研究課題の一つであるソボレフ超臨界の非線形項をもつ楕円型方程式についても有効であると思われるので、これについても解析する予定である。さらに、これまで得た結果は球上領域であることに強く依存しているので、それ以外の場合について、例えば、円環領域についてはどうなるのかということも、研究が進み次第、調べたいと考えている。
非線形シュレディンガー方程式の基底状態より大きいエネルギーをもつ解の挙動については、まず、振動数が大きい基底状態について調べたい。また、同じ2重冪の非線形項であるが、一方は、エネルギー臨界で、もう一方は、質量臨界の場合についてはどうなるのかということを解析出来ると期待している。さらに、これまでの結果では、解のエネルギーに関して条件が必要であった。この条件を取り除くことは難しいかもしれないが、例えば、その条件を仮定せずに、時間が正の方向の無限大では、基底状態の近くにあり、負の方向の無限大では散乱するなど、特別な挙動をする解が存在するかどうかということについて証明できないかということを試みたい。
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Causes of Carryover |
平成26年度は2月、もしくは、3月にブリティッシュ・コロンビア大学に滞在する予定であったが、都合により、次年度に滞在することになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
9月にブリティッシュ・コロンビア大学に滞在する予定である。また、可能であれば、2,3月にも滞在したいと考えている。もし、都合がつかない場合は、海外から研究者を招聘する予定である。
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