2014 Fiscal Year Research-status Report
グラフのErdos-Posa propertyと次数条件の相互関係に関する研究
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26800083
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
千葉 周也 熊本大学, 自然科学研究科, 講師 (80579764)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 点素な部分グラフ / 最小次数条件 / 次数和条件 / 閉路 |
Outline of Annual Research Achievements |
固定したグラフが点素に存在するための次数条件について考察し、以下の研究成果を得ることに成功した。 (1)2010年にDongにより、グラフGの位数が4k以上で非隣接2頂点次数和が|V(G)|+2k-2以上ならば、Gは次の(i)、(ii)を満たすk個の閉路に分割できることが証明された。“(i)各閉路は指定したk点集合Sの点をちょうど1点含む。(ii)高々1つを除いて各閉路の長さは4以下である。” ここで考えている次数和条件はSが完全グラフの場合は最善であることが知られている。本研究では、指定点集合Sと次数和条件の関係性を調べることで、次数和条件を|V(G)|+k-1+Δ(G[S])に改善し(Δ(G[S])はS内の最大次数を表す)、さらに、以下の条件(iii)を追加できることを証明した。“(iii)長さ3の閉路がk-1-Δ(G[S])個以上存在する。” この次数和条件の最善性についても考察し、指定点の状況が次数条件と閉路の長さに影響を与えていることを見出した。 (2)1996年にStiebitzにより、グラフGの最小次数がs+t+1以上ならば、Gは次の(i)、(ii)を満たす2個の点素なグラフF,Hを含むことが証明された。“(i)Fの最小次数がs以上。(ii)Hの最小次数がt以上。” 1998年にKanekoにより、“triangle-free”という仮定を加えると、次数条件をs+tに弱くできることも示されている。本研究では、これらの次数和型を考え、その結果を応用することで、k個の点素な長さが3の倍数の閉路が存在するための最善な次数条件を得た。特に、kのみに依存する次数条件によってその存在性を保証できることが分かった。また、今回の手法によって、多重コード付き閉路がk個点素に存在するための次数条件なども得ることができるので、今後の研究に繋がる重要な手法を見出すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画は、Erdos-Posa property を満たすグラフ、または、頂点数に依存しない次数条件によってその存在性を保証できるグラフの候補を探し、実際にその証明を試みることが目標であった。実際、次数を制限した2個の点素な部分グラフの存在性に関する結果を利用することで、k個の点素な「長さが3の倍数の閉路」や「多重コード付き閉路」の存在性をkのみに依存する次数条件でコントロールできることが分かった。さらに、今回の結果を利用することで、“k個”ではなく、“1個”の場合だけを調べれば、(最善な条件かどうかは分からないが)それらを容易にk個の場合の次数条件へと拡張できることが分かる。従って、頂点数に依存しない次数条件によって存在性を保証できるようなグラフの特徴を見出すのに非常に有向な手段を得ることができたので、本研究課題の目標達成に向けて順調に研究が進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り、平成27年度はErdos-Posa property を満たすグラフや頂点数に依存しない次数条件によってその存在性を保証できるグラフの構造的特徴の解析を重点的に行い、より広いクラスのグラフに対して考察を行う予定である。特に、細分操作に関して閉じていないグラフに対しては、平成26年度に見出した手法が有向的に働く可能性があるので、その部分をさらに詰めていく予定である。さらに、次数条件以外の条件にも注目し、次数条件との間の関係性を調べることで新たな研究の方向性も探っていく予定である。また、26年度中に得た研究成果を論文としてまとめて挙げ、学術雑誌に投稿することで、その結果を世に発信する予定である。これまで同様、国内・国際会議、セミナー等にも積極的に参加し、最新の研究状況を世に発信することで、他研究者と情報交換を行い、研究の問題点・研究方針について議論していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初購入を計画していたコンピュータよりも、本研究を行う上で(論文執筆・発表資料作成・数値実験等の観点において)有用かつ金額の低いコンピュータを購入したため、その差額の一部が当該助成金として生じた(差額の一部は本研究を遂行するための学会発表および研究打ち合わせの国内旅費等として利用した)。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度の研究を順調に進めることができた大きな理由の一つとして「学会発表および研究打ち合わせによる他研究者との情報交換」が挙げられる。国内・国際会議やセミナー等への参加を繰り返し行うことで、26年度の成果を得ることができたので、当該助成金を平成27年度の国内旅費の一部として利用し、本研究の27年度における目標達成に繋げていく。
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