2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26800185
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大成 誠一郎 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (80402535)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 鉄系超伝導体 / 強相関電子系 / 構造相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄系超伝導体における相図全体の理解に関して、軌道秩序状態を詳細に研究した。 鉄系超伝導体においては一般的に低ドープ領域において、テトラ相からオルソ相への構造相転移が起き、鉄のd軌道(xz, yz軌道)に軌道偏極が出現する。その構造相転移における軌道秩序の詳細が最近ARPESにより明らかになってきた。特に反強磁性相転移が存在しないFeSeにおいては、X(Y)点近傍とΓ点近傍で軌道偏極エネルギー(Exz-Eyz)の符号が逆転し、Γ点近傍に縦長のフェルミ面が現れることが報告されている。これは、通常の波数依存性を考慮しない軌道秩序では理解できない。しかし、第一原理計算に基づく多軌道ハバードモデルを用いて、2回対称自己エネルギーを自己無撞着に求めることで、その波数依存性が実験と整合する符号反転軌道偏極を与えることを明らかにした。 その際に、高次多体効果であるバーテックス補正が重要であることが明らかになった。具体的にはバーテックス補正の中でも揺らぎの2次で記述されるAslamazov-Larkin項により軌道偏極が主に引き起こされるが、FeSeにおける符号反転軌道偏極は揺らぎの1次で記述されるMaki-Thompson項に起因することが分かった。 一方、LaFeAsOの第一原理計算モデルを用いた場合は符号反転軌道分極は現れなかった。 これらの結果はAslamazov-Larkin項が軌道揺らぎの増大及び構造相転移を引き起こすという軌道秩序機構と良く整合する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では鉄系超伝導体の超伝導発現機構および相図を解明することが目的であったが、初年度において、LaFeAsOの超伝導発現機構および相図に関して、高次多体効果を考慮したバーテックス補正により理解できることが分かった。本年度は、この理論を発展させて、詳細に軌道秩序状態の研究を行った。具体的には自己無撞着に自己エネルギーの波数依存性を計算することにより、ARPESで観測されている軌道偏極の波数依存性を再現することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が構築した軌道秩序理論の正当性を証明するために、様々な鉄系超伝導体で軌道偏極の波数依存性を計算し、それを用いて用いて、軌道偏極下の輸送係数の計算を行う予定である。 軌道秩序状態において抵抗率や熱起電力等が特異な面内異方性を示すことが知られており、それらは物質群により異なる振る舞いを示すため、これらを統一的に説明することを目指す。
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