2014 Fiscal Year Research-status Report
蜂の巣格子中の強相関超伝導におけるHiggsモードの量子シミュレーション
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26800216
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
土屋 俊二 東北工業大学, 共通教育センター, 准教授 (80579772)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 蜂の巣格子 / スピン3重項超伝導 / スピン軌道相互作用 / クーペロン凝縮 / 量子相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度において、蜂の巣格子中の非従来型超伝導状態について群論を応用することにより、可能な超伝導状態の対称性について分類を行った。また、平均場近似の範囲で基底状態における超伝導秩序パラメタの対称性を決定し、更に相互作用の大きさを変化させたときの系の相図を決定した。蜂の巣格子の結晶の対称性を表す点群に基づいて超伝導状態の分類を行った結果、副格子の自由度により空間の対称性が偶パリティと奇パリティの状態が同じ既約表現に属することを明らかにした。そのため一様な系の場合とは異なり、スピン波動関数が1重項、3重項のどちらの場合にも空間の対称性が偶パリティ、奇パリティの状態が混ざった状態が可能となることを発見した。また、電子間の次近接格子における引力相互作用を仮定し、平均場近似を用いて各状態のエネルギーを調べた結果、スピン3重項状態でクーパー対のスピンが+1と-1の状態の重ね合わせの状態であるA1及びA2と呼ばれる状態が最もエネルギーが低く、縮退した基底状態となっていることを明らかにした。更に、内在性のスピン軌道相互作用が存在する場合には、このスピン3重項のA1, A2状態は更に安定化されることを発見した。その理由として、伝導バンドのK点、K‘点近傍にある同じスピンの向きを持つ電子が、スピン軌道相互作用の影響により同じ種類の副格子に局在しているため、次近接引力相互作用によって同一の副格子間に引力が働くとき、同じスピンを持つ電子がクーパー対を形成するためであると考えられる。この考察を検証するため、ゼロドープにおけるノーマル相において乱雑位相近似を用いて調べた結果、確かに同じ向きのスピンを持つ2つの電子がクーペロンと呼ばれる束縛状態を形成して安定化し、引力相互作用の強さを大きくするとクーペロンがソフト化を起こし凝縮するときにスピン3重項の超伝導状態へと量子相転移することを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度に東京理科大から東北工業大学へと転出したため、東北工業大学における教育、研究環境の整備に手間がかかり、本研究課題に対する研究に集中する事が難しかったため。また、蜂の巣格子における非従来型の超伝導状態の分類が予想以上に複雑であったため、その解析に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで主に蜂の巣格子中の基底状態における超伝導状態を決定する事に重きを置いていたが、平成26年度における研究によって基底状態における超伝導相の対称性を決定できたため、平成27年度はこの超伝導状態における集団モード、特に本研究課題の中心的な目的であるHiggsモードについて研究を進めて行く。また、光格子中におけるHiggsモードの観測可能性についても解析を行う。
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