2015 Fiscal Year Annual Research Report
原子・分子を構成する粒子の近接極限と無限遠極限におけるシュレーディンガー解の追究
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26810014
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Research Institution | Quantum Chemistry Research Institute |
Principal Investigator |
黒川 悠索 特定非営利活動法人量子化学研究協会, 研究所, 研究員 (30590731)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カスプ条件 / シュレーディンガー方程式 / ポテンシャルカーブ |
Outline of Annual Research Achievements |
原子・分子の状態はシュレーディンガー方程式(HΨ=EΨ)によって記述され、その解(=波動関数ΨとエネルギーE)にその系に関するあらゆる情報が含まれている。従って、シュレーディンガー方程式の解を正確に求めることができたなら、化学現象の解明や理論的予測が可能となるはずである。本研究では、2粒子が接近する「カスプ領域」及び粒子が無限遠に離れる「無限遠領域(かい離極限)」において、シュレーディンガー方程式の解として正しい振る舞いをする波動関数を求めることを目的とした。本研究ではまず、これまで知られていたカスプ条件を拡張し、多粒子の一般化近接条件(GCC: Generalized Coalescence Condition)を提案した。GCCは正確な波動関数がカスプ領域で満たすべき必要条件(境界条件)であり、高次の微分係数同士の関係式からなる。高次のGCCを満足すれば、カスプ領域において正確な解が得られることを確かめ数値的に実証した。また、これまでに我々は、Free Complement法を用いることで平衡核間距離付近における水素分子の基底状態のシュレーディンガー方程式の解を精密に求めてきたが、本課題において、これを無限遠領域においても正しい振る舞いをする水素分子の波動関数に適用し、そのポテンシャルカーブを超精密(原子単位で小数点以下5桁程度)に求めることに成功した。また、基底状態のみならず励起状態(∑,Π状態, 1重項,3重項状態,及びgerade, ungerade状態)における各電子励起状態においても、無限遠領域で正しく解離するポテンシャルカーブが得られた。これらは従来求められてきた値より精度が高い。当初の目的の一つとして、電子が無限遠極限における振る舞いも解明する予定であったが本期間中には達成できなかった。
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Research Products
(5 results)