2014 Fiscal Year Research-status Report
グアニジド基とチオエステルを利用した水溶液中での無保護高速ペプチド合成法の開発
Project/Area Number |
26810092
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡本 亮 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30596870)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ペプチド合成 / 水溶液 / ヒドロキシルアミン / グアニジド / チオエステル / ペプチドチオエステル / タンパク質合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では水溶液中での高速ペプチド合成法の開発を目的としている。アミノ酸がアミド結合により鎖状に連なった分子であるペプチドを化学合成するためには、適切に保護されたアミノ酸同士の「脱水縮合反応」と、次のアミノ酸との縮合を行うための「位置選択的な保護基の除去」が鍵となる。水溶液中でのペプチド合成法開発のため、初年度は、i) チオエステルを利用したカルボキシル基の活性化と縮合反応、ii) グアニジド基からチオエステル基への変換反応を利用した、ペプチドC末端カルボキシル基の保護-活性化反応の検討、を行うとともに、iii) 水溶液中で利用可能なアミノ基の新しい保護基の開発を行った。この結果以下のような結果を得た。 i)ではアリールチオエステルを脱離基として、イミダゾールを含む中性付近の緩衝溶液条件下で、迅速に(数分-30分程度で)アミド結合を形成できることを見出した。 ii)では、グアニジド基の類縁体として2-アミノチアゾリンおよびメチルチオウレアの、チオエステルへの変換能の検討を行った。この結果、いずれの場合にも反応完了に数時間かかるものの、チオエステルへと変換可能であることを見出した。 iii)では、ヒドロキシルアミンをもつ親水性の新規カーバメート型保護基を見出し、DTT等の還元剤を含む中性の緩衝溶液条件下、1分以内に定量的に脱保護される事を見出した。 i), ii)にて得られた結果はいまのところ当初期待した効率的かつ高速での反応までは到達してはいないが、本研究遂行のための基盤となる知見を見出す事ができた。さらにこれらの検討の中で、iii)のような非常にユニークな性質を有する保護基を見出した点は特筆に値し、本発見は新しい角度から本申請研究実現をさせうる結果であると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究申請書では保護基を用いない水溶液中での高速ペプチド合成法の開発を目的として、チオエステルとグアニジド基を利用した新規な合成法を提案していた。このなかで1年目~2年目初頭の目標として、チオエステルを利用した縮合反応と、グアニジド基のチオエステル基への変換反応条件の最適化による、基盤技術の確立を目標としていた。検討の結果、チオエステルを利用した縮合反応および、アルキルチオウレアを用いたチオエステルへの変換反応を見出す事ができた。2年目初頭での検討課題として、これらの高速化を含む高効率化が挙げられるが、一年目の検討結果としてその基盤的知見を得る事ができた。 その一方で特筆すべき結果は、上記のような検討を行う中で、ヒドロキシルアミンをもつ新規なアミノ基の親水性保護基を発見した点である。本保護基はグアニジド基という特殊な含窒素性官能基の類縁体を模索する過程で発見する事ができた新規含窒素性の保護基である。このような親水性保護基をもつアミノ酸誘導体は水溶液で利用可能となることが期待されるため、有機溶媒中で行われている現行のペプチド合成法をすべて水溶液中で行える様にできる可能性がある。 以上を鑑みると、当初予定していたチオエステルとグアニジド基を利用した手法の開発検討についてはほぼ予定通りであり、同時に別の角度から極めて有効な手法を発見する事ができたため、本研究の目的である保護基を用いない水溶液中での高速ペプチド合成法の開発という観点からは1年目として十分良好な結果が得られたものといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の計画通りH27年度初頭は1年目の計画をふまえ、引き続き最適な基盤技術の検討を行う。当初の申請では、チオエステルとグアニジド基を中心に利用した合成手法の検討を提案していたが、この研究過程で、アミノカーバメート基というアミノ基の新しい水溶性保護基の開発に成功した。このような保護基をもつアミノ酸誘導体はすべて水溶液で利用可能となり、有機溶媒中で行われている現行のペプチド合成法をすべて水溶液中で行える様にできる可能性があることより、H27年度はまずこの保護基を利用した新規ペプチド合成手法のの開発を中心にさらなる検討を行う。 すでにモデルペプチドでの検討より、アミノカーバメート基は効率よく水溶液中で脱保護可能である事を見出している。次のステップとして、この保護基を有するアミノ酸誘導体の合成を行い、縮合反応への利用を検討する。この際、1年目に見出したチオエステルを用いた縮合反応に加え、各種水溶液中で利用可能な脱水縮合剤も利用しながら、最適条件の模索を行う。これが確立されれば、ペプチド合成の一連のサイクルに必要な手法が確立される。この後、各天然型アミノ酸誘導体(最大20種)を合成し、従来法では合成困難であるような疎水性ペプチド等も含めたモデルペプチド合成を通して本新規手法の有用性を検討する予定である。
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