2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26820004
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
黒川 悠 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (40513461)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非破壊検査 / 超音波 / 表面粗さ / 裏面粗さ |
Outline of Annual Research Achievements |
供用中の配管や材料裏面の粗さは腐食やエロージョン,スケールの付着等の劣化の度合いと関連している.表面粗さの測定には,触針法やレーザー顕微鏡で詳細な表面形状を測定し,それを基に粗さパラメータを算定する手法を用いるのが一般的であるが,これらの手法で測定できるのは試料表面の粗さのみで,表面の反対側,すなわち裏面の粗さを直接測定することはできない.裏面粗さを非破壊的に評価できれば,上記の劣化の度合いを評価できる可能性がある. 本研究では,超音波を試料内部に入射し,裏面で反射・散乱した超音波の強度を基に試料裏面の粗さを非破壊的に評価する手法を確立する.そのために,裏面における超音波のモード変換の発生や,使用する超音波が広帯域のパルス波であることを考慮しながら,使用する超音波の種類(縦波,横波),波長,裏面に対する超音波の入射角,裏面粗さ,裏面形状の相関長それぞれが超音波の反射強度に及ぼす影響をそれぞれ検証し,超音波強度から裏面粗さを推定するためのモデルを構築する. はじめに,2次元の粗い裏面に超音波が入射した場合の反射・散乱強度を,モード変換を考慮したKirchhoff近似で計算する数値計算プログラムを製作した.製作したプログラムを用いて,ランダムな粗面を多数作成し,粗面の粗さと反射波の強度の関係を調査し,粗面の二乗平均平方根粗さおよび相関長,入射角と反射・散乱波の強度の関係を明らかにした. 次に差分法による数値シミュレーションを行い,粗面で反射した波の強度を測定し,数値計算で得た反射波の強度と粗さの関係から粗さを測定できることを示した.また,縦波を15度から30度の入射角で入射し,粗面で反射する際にモード変換によって生じる横波の強度を測定すれば相対的に精度良く粗さを測定できることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画どおり,はじめに超音波が粗い裏面に入射した場合の反射・散乱強度を,モード変換を考慮したKirchhoff近似で計算する数値計算プログラムを製作した.製作したプログラムを用いてランダムな粗面を多数作成し,粗面の粗さと反射波の強度の関係を調査し,粗面の二乗平均平方根粗さおよび相関長,入射角と反射・散乱波の強度の関係を明らかにした.なお,当初は平成26年度中に数値計算プログラムを3次元の粗面についても解析できるよう拡張する予定であったが,2次元についての計算結果の妥当性の検証を先に行うこととしたため,3次元への拡張は平成27年度に行うこととした. 次に,2次元の差分法による超音波伝搬シミュレーションを行い,数値計算で構築したモデルの妥当性を検証した.種々の粗面プロファイルについてシミュレーションを行い,数値計算で構築したモデルから粗面の二乗平均平方根粗さを測定できることを示した.縦波を15度から30度の入射角で入射し,粗面で反射する際にモード変換によって生じる横波の強度を測定すれば相対的に精度良く粗さを測定できるが,入射角が30度より大きい場合,測定誤差が大きくなることが明らかになった. また,平成27年度以降に行う実験のために,粗さを有する試験片を製作して予備実験を行った.その結果,超音波探触子と試験片の接触状態が変化すると,反射波の強度の測定誤差が大きくなることが明らかになった.そこで当初予定していた超音波探触子自動スキャナの導入を見直し,より適切な実験装置を構築することとした.また,予備実験に用いた試験片には機械加工で周期的な粗さを導入したが,周期的な粗さを導入すると超音波の干渉が生じて測定結果に影響を及ぼす場合があることが明らかになった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の結果をふまえ,超音波が粗い裏面に入射した場合の反射・散乱強度を計算するプログラムを,3次元の粗さを有する裏面についても計算できるように拡張する.製作したプログラムの妥当性は差分法による3次元の超音波伝搬シミュレーションを行って検証する予定であるが,シミュレーションには膨大な計算時間が必要となるため,平成27年度の早い段階からシミュレーションについて検討を始める. また,超音波の入射角が大きいと,数値計算で得た超音波の反射強度と差分法によるシミュレーションで得た反射強度の差が大きくなることが明らかになった.これは,粗面に超音波が入射する際に影となる部分が生じることや,粗面で超音波が多重反射することを数値計算で考慮していないためだと考えられる.数値計算を行う際に,必要に応じてこれらの影響を考慮できるようプログラムを改良する. それと併せて,2次元的な裏面粗さを有する試験片を製作し,実験を行う.超音波探触子と試験片の接触状態が変化すると反射波の強度の測定誤差が大きくなることが明らかになったため,当初予定していた超音波探触子自動スキャナの導入は見送り,適切な冶具やカプラント材を用いて実験を行うこととする.試験片に粗さを付与する際に,機械加工で周期的な粗さを導入すると,超音波の干渉の影響でランダムな粗面とは異なる現象が観察されるため,適切な加工方法を検討する. 2次元的な粗さを有する試験片で検証が完了した後,3次元的な粗さを有する試験片を用意して実験を行い,数値計算結果と比較する.また,裏面粗さを測定し,測定条件や粗面の粗さ,相関長等と測定精度の関係を調査する.
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Causes of Carryover |
当初は超音波探触子自動スキャナを製作して実験を行う予定であったが,予備実験を行った結果,超音波探触子と試験片の接触状態が実験誤差に大きな影響を及ぼすことが明らかになった.そこで自動スキャナの導入を見直し,より適切な実験装置を平成27年度以降に構築することとしたため,繰越金が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験を行う際に,超音波探触子と試験片の接触状態を一定に保てるよう,適切な冶具やカプラント材を導入するために使用する.
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Research Products
(2 results)