2014 Fiscal Year Research-status Report
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26820042
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
津田 伸一 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00466244)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 量子性 / 水素 / 気泡初生 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素の工学的需要が著しく高まる中,液体水素の効率的な貯蔵・輸送方法の検討は,重要な一研究課題として位置づけられる.液体水素はわずかな熱侵入により容易に気化すると考えられており,水素の発泡(初生)条件を正確に踏まえた気液二相流動場の詳細理解が,効率的な貯蔵・輸送方法を模索するうえで非常に重要である.このような背景を踏まえ,本研究では水素中における気泡の初生条件を特定するうえで必要となる,気泡初生速度(発泡のしやすさを定量的に表す物理量)の解明とその数理モデリングを目的としている. 本年度は,液体水素に特有の量子力学的な性質(量子性)を再現可能な「経路積分セントロイド分子動力学シミュレーション」を用いて,気泡初生を促進する,液体中の空隙(ボイド)体積を評価した.これは,気泡発生前の段階において,液体中で形成される空隙体積が大きければ大きいほど,より発泡しやすいと判断できるからである.この空隙体積を,独自に構築した評価関数を用いて推算し,これを水素特有の量子性が顕在化しない流体(古典流体)と比較することで,液体水素中における発泡のしやすさを評価した.その結果,同じ数密度で比較した場合,液体水素の方が古典流体に比べて,液体中に内在している空隙体積が著しく小さく,理論上は液体水素が非常に発泡しにくい液体であることを示唆する結果が得られた.このことは,水素中における気泡初生の条件が,水に代表されるその他多くの液体の場合に比べて定量的に大きく異なり得ることを世界的にも初めて示したもので,工学的のみならず理学的にも意義深い結果として位置づけられる.一方,気泡初生速度の定量評価にはまだ至っておらず,この点が次年度以降の大きな課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標は,水素の気泡初生速度の解明およびその数理モデリングであり,平成26年度の目標は,「経路積分セントロイド分子動力学シミュレーション」を適用することで,気泡初生速度に大きな影響を与える空隙(ボイド)体積を実際に評価することであった.研究実績の概要にも示している通り,この点についてはおおむね達成できたと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に構築した空隙(ボイド)体積の評価方法を用いて,まずは様々な温度・圧力における液体中の空隙体積を,温度と圧力の関数としてモデル化する.このモデル化と,先行研究によってほぼ明らかになってきている,気泡初生に必要な空隙体積の温度・圧力依存性との対比を通して,液体水素中における気泡初生速度の解明およびモデル化を図る予定である.
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