2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26820042
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
津田 伸一 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00466244)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 量子性 / 液体水素 / 気泡核 / キャビテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,液体水素に特有の量子力学的性質(量子性)が,気泡の初生過程に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,水素の量子性を再現可能な「経路積分セントロイド分子動力学シミュレーション」と呼ばれる手法を用いた解析をおこなってきている.前年度は,気泡が発生する直前の段階における液体水素の内部構造を調べることで,水素の量子性が気泡の初生のしやすさ(発泡のしやすさ)に及ぼす影響を定性的に評価し,量子性は発泡を妨げる作用をもたらすという知見を得た.これを踏まえ,本年度はより定量的な評価をおこなうため,本シミュレーション結果から推算される水素の状態方程式を用いて,発泡のしやすさを理論的に評価した.具体的には,発泡のしやすさを定量化した核生成速度(単位時間単位体積あたりに換算した気泡の生成速度)と呼ばれる指標を,「古典核生成理論」および「密度汎関数理論」と呼ばれる二つの代表的な理論を用いて評価をした.その結果,核生成速度を決める適切な独立変数として「無次元過熱度」と呼ばれる無次元量を導入すると,同じ無次元過熱度で比較する限り,液体水素の量子性は,核生成速度を5桁程度,高くすることがわかった.また,同じ無次元過熱度で比較する限り,発泡の際に乗り越えるべきエネルギー障壁(一般にエネルギー障壁が低いほど発泡しやすい)は,量子性の有無によらずほぼ同一となる一方,このエネルギー障壁をもたらす気泡径は量子性があることで大きくなり,このことが上記の核生成速度の違いをもたらしていることがわかった.以上のことから,前年度の結果も踏まえると,液体水素の量子性は,気泡の初生を起こりにくくすることが総合的に明らかとなった.
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