2014 Fiscal Year Research-status Report
希釈ビスマス半導体を用いた光通信帯光源が利用可能なテラヘルツ波発生検出素子の開発
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26820114
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
富永 依里子 広島大学, 先端物質科学研究科, 助教 (40634936)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 低温成長GaAs系半導体 / 分子線エピタキシャル成長 / X線回折法 / ラザフォード後方散乱法 / 光伝導アンテナ / テラヘルツ電磁波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、低温成長希釈ビスマス(Bi)半導体を用いた、光通信帯光源が利用可能なテラヘルツ(THz)波発生検出用光伝導アンテナ(PCA)を実現することである。当該年度は、本研究予算でBi用のクヌーセンセルを購入し、現有の分子線エピタキシャル(MBE)成長装置にこのセルを追加した。現在、低温成長希釈Bi半導体(特に低温成長GaAsBi)のMBE成長条件を探索している段階である。そこで、当該PCA用として世界的に最もよく研究されている材料の一つである低温成長InGaAsにまず着目し、今後の低温成長GaAsBiの比較対象とするために低温成長InGaAsの結晶構造評価およびPCAの作製を行った。
研究代表者はこれまでに、X線回折(XRD)法とラザフォード後方散乱(RBS)法を用いた結晶構造の評価により、XRDピークが得られた220℃で成長したInGaAsであっても、そのInGaAs層内に取り込まれているIn原子の約40%が格子間に位置していることを明らかにしている。研究代表者が所属しているグループでは、180℃で成長したInGaAsから成るPCAを利用したTHz波の発生と検出に成功しているため、当該年度は特に200℃および180℃でInP基板上にMBE成長した厚さ1-2μmのInGaAsの結晶構造評価を進めた。200℃および180℃で成長したInGaAsにおいては、どちらからもXRDピークが得られなかったが、400℃以上で熱処理を行うと回折ピークが得られた。同一の試料の状態をRBSのチャネリング測定を用いて調べたところ、熱処理前後のいずれにおいてもチャネリングディップカーブは得られなかった。これらの結果とこれまでに報告されている低温成長GaAsの結果を併せて考え、熱処理によって低温成長InGaAs層内にAs凝集体が形成されたものと現時点では推測している。今後、このAs凝集体の形成について透過電子顕微鏡観察を行う予定であり、更には低温成長GaAsBiの場合との比較も行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、分子線エピタキシャル成長(MBE)装置にBi用のクヌーセンセルを新たに追加するためのメンテナンス作業と低温成長GaAsBiのMBE成長条件の探索に時間を要しており、当該成長に関してはやや遅れている状況である。
そこで当初計画を一部変更し、当該年度はV族元素のBiに対してIII族元素のInを含む低温成長InGaAsの結晶構造評価手法や光伝導アンテナ作製プロセスの確立を先に進めた。また、GaAsBiのバンド構造に関する理論計算も進めた。
よって現時点で到達度はやや遅れてはいるが、次年度に低温成長GaAsBiを成長できるようにすれば、当該年度に確立した事柄を利用して当初目標を達成できる状況にあると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、早急に低温成長GaAsBiの分子線エピタキシャル成長条件を明らかにする。成長した低温成長GaAsBiの結晶構造の評価を行い、その光伝導アンテナ(PCA)を作製する。低温成長GaAsBiの結晶構造とPCAのテラヘルツ波発生検出特性との相関を得て、今年度に製作した低温成長InGaAsから成るPCAの場合に比べてテラヘルツ波発生検出特性が向上していることを実証する。
低温成長InGaAsは、光通信帯光源が利用可能なPCA用としてこれまで盛んに研究されてきた材料であるため、低温成長InGaAsに対して低温成長GaAsBiの優位性が示されれば、当初研究目標を達成できると考えている。
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