2014 Fiscal Year Research-status Report
木質構造における筋かいの座屈耐力と変形能力に期待した耐力壁の開発
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26820236
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
神戸 渡 関東学院大学, 建築・環境学部, 講師 (90453000)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 木質構造 / 座屈 / 単板積層材 / 筋かい耐力壁 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、変形能力の大きい筋かい耐力壁の開発が最終目的である。そのためには、筋かいに曲げ座屈が発生した後も、破断せずに耐力を維持できるような性能を有していることが望ましい。そこで、筋かいに用いる材料を選択するための試験を行い、その構造性能の詳細な検討を行うことが初年度の目的である。 初年度は、LVLを対象とした圧縮試験を行い、座屈強度の評価手法、変形性能の確認などを検討した。使用した樹種は、カラマツ、ヒノキ、スギである。使用したLVLの日本農林規格による等級は、カラマツでは1OOE、ヒノキでは80E、スギでは60Eのものとした。また、筋かいで使うことを想定しているため、断面の大きさは45×90mmの一種類とした。この材料を用いて、様々な長さの試験体を切り出し、それらを用いた圧縮試験を行った。短柱の縦圧縮試験を材料定数を得るための目的として行い、それより長いものは座屈強度の評価を行うための圧縮試験とした。圧縮試験では、細長比50,60,70,80,100,130,150,190の8種類の細長比を選択した。それぞれの細長比に対して3~4体の試験を行った。 試験の結果より、材料ごとの降伏ひずみの定義、その降伏ひずみを用いた塑性座屈強度の定義、およびそれらの強度に対する座屈強度の評価式の定式化を行った。それにより、限界細長比は3樹種とも100と定めることができた。細長比が100以上の範囲では、弾性座屈が発生しており、その場合はオイラーの座屈強度式を用いることで、座屈強度の評価が可能であることが分かった。また、細長比が100を下回る範囲では、塑性座屈が発生しており、その場合はテトマイヤーの方法を用いることで、座屈強度の評価が可能であることが分かった。また、すべての樹種において、降伏ひずみの2倍にあたる曲げ変形までは、曲げ破断をしないという傾向が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的では、強度、剛性、降伏ひずみなど、座屈強度を評価するための基本的な値の整備を行い、それらを用いた座屈強度の評価手法の定式化および破壊性状の把握を行うことを目的とした。それらの目的は当初の予定通り達成することができた。 また、最終年度に筋かい耐力壁に適用するための検討を予定していたが、その足掛かりとして、LVLを筋かいに用いた耐力壁の加力試験も行い、耐力壁の変形性能を評価するために、先に定義した降伏ひずみが有効であるであろう、という傾向を得ることができた。信頼性を高める上では引き続き、慎重な検討が必要であるが、次年度へ繋がる成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は筋かいにB種LVL、通称LVBを用いた圧縮試験と筋かい耐力壁の試験を行う予定である。圧縮試験の方法、座屈強度の評価手法は本年度とおおよそ同じ方法とする。また、耐力壁の試験方法も昨年度とおおよそ同じ方法とする。2014年度の研究成果を日本建築学会関東支部で発表した際、有益な助言を頂いたので、それらを今年度の実験に生かしたいと考えており、その手法に関しては現在検討中である。
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Causes of Carryover |
2014年度は、研究成果の発表を国際会議の発表することとなり、このことは申請時とは異なる計画であった。そのため、予算の使用状況が当初とは異なっているが、研究に対する予算予定には変更はない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、LVBの座屈強度に関する試験と、壁試験を行う予定である。試験体用の材料の発注は前年度と同じ会社を想定しているため、事前に見積もりを受け取り、それに基づき研究計画を立て、予算計画も立てている。
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