2016 Fiscal Year Research-status Report
宮廷女房日記にみる中世前期寝殿造の復原的研究―王朝文化の変容と空間演出を視点に―
Project/Area Number |
26820276
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Research Institution | Morioka Junior College,Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
赤澤 真理 岩手県立大学盛岡短期大学部, 生活科学科生活デザイン専攻, 講師 (60509032)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 寝殿造 / 女房日記 / 宮廷 / 装束 / しつらい / 儀礼空間 / 絵巻 / 王朝文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来の古代中世住宅史に対し、男性貴族が参入できなかった御簾内の后・内親王と女房が生活した空間の実像を究明することを目的とする。これにより、寝殿造の空間の特質とその変容過程に新しい視点を提示する。 (1)女房装束の打出は、平安後期から鎌倉時代になされた寝殿造における空間装飾である。御簾内から外に向かって、女房が着用した装束を出し、袖口のかさねの色目を演出する。本年度は、特に打出の消失要因を、①跳ね上げの格子が、引き違いの建具となること、②しつらいの固定化・建築化、③歌合などの男女が共に共有する行事が失われ、儀礼空間に女房の存在が示されなくなること(宴会から、対面儀礼へ)。以上をまとめ、日本建築学会近畿支部建築史部会及び、平安京の〈居住と住宅〉研究会等において、報告した。 (2)平安後期から南北朝期に制作された『紫式部日記』『讃岐典侍日記』『たまきはる』 『弁内侍日記』『とはずがたり』『竹向きが記』を精読し、住宅と住生活の記述を抽出し、データー化した。 (3)儀礼空間における女房の空間の実態を検討するために、『栄花物語』『紫式部日記』等から中世宮廷女房日記までに散見される、「おしこりて」「いなみる」の用語に注目した。これらは、儀礼時において女房達が空間に、おしかたまり居並んでいる様相である。今後は、源氏物語絵巻・紫式部日記絵巻等の絵巻を合わせて検討し、当時の空間を復原する。 (4) 中・近世における王朝物語絵に関する画像史料を収集した。米国フリアギャラリー、ハーバード大学美術館、メトロポリタン美術館、サントリー美術館等における調査を実施した。また、大和文華館「白描の美-図像・歌仙・物語」で、女房が制作・享受した物語絵を実見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であった、女房装束の打出の成立と変遷を明確にすること、中世宮廷女房日記の住空間・住生活を検討することについて、おおむね作業を推進することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
打出の消失要因として、儀礼空間における女房の座の変遷が背景にあると考えられる。今後は、平安後期から南北朝期の住宅における女性の居所の変遷を、先行研究や貴族の日記、中世文学等から検討することが課題である。これにより、源氏物語の時代から、室町時代初期までの宮廷における、后・国母・女院、女房の空間を通時的に明らかにすることが課題である。婚姻形態と住宅に関わる先行研究も多数存在するため、それらを精読する必要がある。
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