2014 Fiscal Year Research-status Report
河川輸送に投入するバージ船団の性能開発と交通流評価
Project/Area Number |
26820380
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐野 将昭 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40582763)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 船舶工学 / プッシャー・バージ / 載荷状態 / 浅水影響 / 河川輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
安価で環境にも優しい河川輸送の担い手であるプッシャー・バージシステム(PBS)は、プッシャーとバージから成るユニークな輸送形態である。このため一般商船とは異なる流体力特性や操縦性能を有すると思われるが、その実態は不明な部分が多い。そこで本年度は、水槽実験用の模型船の計画、ならびにプッシャー・バージ船団を対象にCFDによる流場解析を実施した(下記項目1、2)。また次年度の輻輳海域シミュレータ(MTSS)の本格的活用に向け、運動モデルの改良、先行計算を実施した(同3、4)。 1.全長4.5mのPBS模型を計画し、プッシャー船は製作済み、バージは製作中である。プッシャー船は単独で自航可能な大きさで製作しており、PBSとの比較を通じて、バージの存在による干渉影響を評価できる。水槽実験は遅れて次年度前半に予定している。 2.バージ数や配置が異なる種々のPBS船団を対象に、CFDによる流場解析を実施し、船団ごとに異なる流体力特性のメカニズムを明らかにした。またPBSはプッシャーがバージの後流域を利用できる輸送形態である事から、CFD計算を通じて、バージ船尾形状の変更により抵抗低減が図れる可能性を示した。 3.MTSSで使用される船の操縦運動数学モデルをKTモデルからMMGモデルに改良し、PBSの操縦運動の再現性を高めた。運動方程式には河川流を考慮した。また現行の輸送形態であるタグ・バージシステム(TBS)との比較を念頭に、タグ・緊張索・バージから成るTBSの運動方程式も導入した。 4.インドネシアのマハカム川で就航中のTBSおよび投入が検討されるバージ全長の異なる3隻のPBSを想定し、CFD計算等に基づき一連の操縦流体力を推定した。そしてマハカム川上流の屈曲部を対象に操船シミュレーションを行い、TBSとPBSの操船性の差異を論じ、PBS投入の可能性について初期的な検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の研究実施計画(前倒し支払請求後)では、大別して「水槽実験」、「CFD解析」を計画していたが、やや遅れ気味である。 当初予定されていた「水槽実験」は、現時点でまだ実施できていない。計測機器を搭載した際の排水量の確保とトリム調整の都合上、プッシャー模型船のサイズを当初予定よりも大きくした。それに伴い船首尾形状に改良の必要が生じ、年度末まで大幅に製作がずれ込んだ事が理由である。併せてバージ製作も遅延しているが、次年度前半には水槽実験を実施予定である。水槽実験後は速やかに解析を進め、操縦運動数学モデルの構築、操縦運動シミュレーションによる評価を推し進める。 「CFD解析」は実施中である。深水域において、バージ数・配置の異なるプッシャー・バージ船団のCFD計算を実施し、流体力特性のメカニズムについて考察した。加えて性能改善案を検討するべく、バージ船尾形状が抵抗特性に及ぼす影響についても検討した。CFDの計算環境は整っている事から、浅水影響等の未検討項目についても速やかに取り組む。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度までにやり残した課題を速やかに推し進めると共に,次年度の研究計画に則って研究を進めていく。 【水槽実験(研究計画の一部変更と対応策を含む)】プッシャー・バージ模型による水槽実験を実施する。バージによるプッシャーの自航要素の変化(干渉影響)を明らかにする為、プッシャー船単独でも自航可能な模型船を新規に製作したが、排水量確保の為に当初予定よりもサイズを大きくせざるを得なかった。この為、水槽実験可能な全長の上限を考慮すると、1台のバージを1隻のプッシャーが押航する形式のみでの実験になる予定である。種々のプッシャー・バージシステム(PBS)の性能評価については、CFD計算ベースで検討する。なお流体力特性に及ぼす載荷影響の調査に加え、曳航水槽内に仮床を敷いての浅水域実験スケジュールを確保できそうな為、浅水影響についても水槽実験で明らかとする。 【操縦運動シミュレーション計算】水槽実験結果に基づき一連の流体力係数等を同定し、操縦運動数学モデルを構築する。シミュレーション計算、固有値解析を通じて、操縦性・保針性を明らかとする。 【CFD計算】本年度の深水域に続き、浅水域を模擬したCFD計算を行い、水槽実験結果の考察に役立てる。また供試船のみならず,種々のPBSを計算対象に加え,バージ数や配置が流体力特性に及ぼす影響を検討する。 【インドネシアのマハカム川の交通流シミュレーション】本年度の段階で先行的に輻輳海域シミュレータ内の運動モデルを改良しており、次年度は、改良シミュレータによる同河川の交通流シミュレーションを実施する。特に現行タグ・バージシステム(TBS)からPBSに輸送形態が変化した場合、高速化した場合、交通量が変化した場合等のケーススタディを実施し、ニアミスや衝突件数といった航行困難度を評価する。
|
Causes of Carryover |
プッシャー模型の設計変更から予算の補填が必要となり、前倒し支払いを300000円請求して認めて頂いた。こうした事情もあり、当初予算と若干の差額が生じた次第である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.国内学会や国際会議等へ出席する為の旅費(\600000)を計上した。発表および同分野の最新の研究動向についての情報収集が目的である。 2.水槽実験で使用する押航バージの模型制作費を計上した(\800000)。次年度使用額(\28567)は、プッシャーとバージの連結治具の製作費(物品費)に充てる予定である。 3.プリンタートナー・用紙等の研究遂行時に必要な消耗品費(\20000)、その他(論文投稿費等:\80000)を計上した。
|