2014 Fiscal Year Research-status Report
神経細胞移動の基盤となる細胞骨格および核ダイナミクスの解析
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26830012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梅嶋 宏樹 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 研究員 (40525375)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 発生・分化 / 細胞・組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は脳の形成過程における神経細胞の細胞核移動を駆動するメカニズムを明らかにすることを目的とする。これまでに核を駆動するメカニズムについては微小管またはアクチン骨格が前方から核を牽引するモデルや後方から核を押出するモデルが提唱されているがいまだ決着がついていない。また、神経細胞移動および脳皮質形成に関与する遺伝子としてこれまでに多くの細胞骨格関連遺伝子が同定されているが、それらが細胞骨格をどのように制御し細胞核移動を実現しているかについても不明な点が多い。本研究から得られた知見は脳の形成不全に起因する神経疾患の病態解明にも寄与すると期待できる。 これまでに高速共焦点顕微鏡を用いた経時観察から、核が移動に伴い回転や変形といったダイナミックな挙動を示すことを見出している。本研究では、細胞骨格系を撹乱した際の細胞核ダイナミクスへの影響を詳細に解析することで核移動の際に作用する力の発生源を特定する。 本年度は、核の回転運動を駆動する分子メカニズムについて検証を行なった。アクチンの重合阻害剤およびミオシン活性の阻害剤を投与したところ、核移動が停止する一方で回転運動に顕著な影響は見られなかった。このことから移動中の神経細胞の核がアクチン-ミオシン以外の外力を受けていることが強く示唆された。さらに予備的な結果として微小管骨格が回転運動に関与することを示唆する結果を得ており、次年度はこれを検証する。 また、核が牽引されているのか押出されているのかを検証するため、移動中の神経細胞が足場となる基質に及ぼす力をtraction force microscope法により測定した。その結果、移動の際には核が前方の先導突起から押出されるよりむしろ牽引されていることを示唆する結果を得た。次年度は細胞骨格系の撹乱がtraction forceの発生に及ぼす影響および核移動との相関についてさらに検証を行なう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究の多くは分子の阻害により核移動が影響を受けるかどうかのみに着目していた。この方法ではその分子が細胞核に直接作用する力の発生源なのか間接的に核移動に関与しているのかを判別することが難しい。本研究ではこれまで報告されていない核の回転運動に注目し、アクチン骨格系の阻害が核移動は阻害するが回転運動は阻害しないことを見出した。この結果はアクチン骨格系以外の力が移動中の細胞核に作用していることを強く示唆しており、核ダイナミクスの詳細な解析から核移動の際に作用する力に迫るという本研究における方針の有効性が実証されたといえる。 また、従来提唱されている牽引および押出モデルは主に細胞骨格の局在にのみ依拠したものであり、神経細胞移動に関与する力の分布を直接検証した報告は存在しない。本研究ではtraction force microscopeを導入することで神経細胞移動における力の分布を初めて直接的に観察することに成功した。また、traction force microscopeは従来の細胞核および細胞骨格イメージングと並行して行なうことが可能であることから、次年度以降、traction forceと細胞骨格ダイナミクスや細胞核ダイナミクスの相関を検証することにより神経細胞の核移動を支配する力学的基盤を明らかにできると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の2点を中心に研究を推進する。 (1)核の回転運動を駆動するメカニズムについての検討を行なう。本年度までに核の回転運動にはアクチン骨格系よりもむしろ微小管骨格系が重要であることを示唆する結果を得ている。本年度はこれをさらに検証する。微小管骨格関連分子、特に微小管モータータンパク質に着目し、拮抗阻害分子の発現やsiRNA knock-down手法を用いて当該分子を抑制し回転運動への影響を調べる。 (2)traction forceと細胞骨格ダイナミクスの同時イメージングにより核移動と相関する力がどのようなメカニズムにより発生しているのかを検討する。さらに細胞骨格ダイナミクスを局所的に撹乱し核移動およびtraction forceへの影響を検証する。細胞骨格ダイナミクスの局所撹乱にはCALI法および薬剤の局所投与システムを用いる。これらの実験手法の確立に関してはすでに準備を進めている。上記の結果を踏まえ、核移動に必要なtraction forceの発生に関わる制御因子の探索を行なう。薬理学的および分子生物学的手法を用いて注目する分子を阻害しtraction forceへの影響を検討する。また、FRETセンサーなどを用いて当該分子の活性とtraction forceの相関を調べる。
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Research Products
(2 results)