2014 Fiscal Year Research-status Report
神経細胞の極性形成を制御する新規シグナル伝達経路の解明
Project/Area Number |
26830045
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高野 哲也 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00725541)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経極性 / 発生 / 細胞極性 / 軸索形成 / 樹状突起形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞は脳内において複雑なネットワークを形成するが、その基本機能は信号を受け取り統合して他の細胞に伝えることである。そのため、神経細胞は分化の過程で、通常1本の軸索と複数の樹状突起を形成する。これまでの知見より、軸索も樹状突起も共通の未成熟な神経突起から形成されることが知られている。しかしながら、どのようにして未成熟な神経突起のうち一本のみが軸索になり、複数の軸索形成が抑制されるのかなどについては未だに判っていない。そこで本研究では、一本のみの軸索形成を制御する分子機序(ネガティブフィードバック機構)を明らかにすることを目的とする。 本年度は、軸索以外の未成熟な神経突起において、複数の軸索形成を抑制する因子を同定するために単一の神経突起のみに刺激を与える局所刺激法を用いて阻害剤のスクリーニングを行った。その結果、Rho-kinaseの阻害剤(Y-27632)によって未成熟な神経突起が急速に伸長し、複数の軸索が形成されることが明らかとなった。さらに、RhoAの阻害剤(C3)によっても同様の効果が認められたことから、複数の軸索形成を抑制する分子機構としてRhoA/Rho-kinase経路が関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、神経細胞において一本のみの軸索形成を制御する分子機序(ネガティブフィードバック機構)を明らかにしつつある。局所刺激法を用いたスクリーニング系により、未成熟な神経突起にて複数の軸索形成を抑制する分子機構として、RhoA/Rho-kinase経路が関与していることを明らかとした。さらに、このRhoAの活性化制御機構についても現在取り組んでいるところであり、Ca2+シグナリングが関与している等、既にいくつかの予備的知見を得ている。従って、神経細胞の極性形成を制御するネガティブフィードバック機構の理解が進みつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度のスクリーニングで得られたRhoA/Rho-kinase経路やCa2+シグナルを中心に、時空間的な局在や活性化機構について検討する。具体的には、RhoAのFRET (蛍光共鳴エネルギー転移)プローブを用いて神経細胞でのRhoAの時空間的な活性化動態と神経細胞の極性化との相関を検討する。また、軸索からの細胞体や未成熟な突起に向けてのCa2+の時空間的動態を検討するために、Oregon Green 488 BAPTA-1やCal520などの蛍光プローブを用いたイメージング解析を行う。さらに、Ca2+シグナルの下流で機能するRhoAの活性化因子(GEF)についても阻害剤を用いたスクリーニングや質量分析(LC/MS/MS)を用いて同定を行う。
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Causes of Carryover |
分子生物学、細胞生物学の実験用の試薬について現在あるものを使用したために、未使用額が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
神経細胞におけるRhoAの活性化動態を検討するために、神経細胞発現用のFRETプローブを作製する。さらに、神経細胞におけるCa2+動態をモニターするために、Oregon Green 488 BAPTA-1やCal520などの蛍光プローブを購入し解析を行う。また、上記の実験計画によって得られた結果を国内学会及び国際学会にて発表を行う。
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[Presentation] Rho-kinaseによる神経細胞の極性形成・維持機構の解明2014
Author(s)
Tetsuya Takano, Shinichi Nakamuta, Chundi Xu, Takashi Namba, Mutsuki Amano and Kozo Kaibuchi
Organizer
第57回日本神経化学会大会
Place of Presentation
奈良県文化会館、奈良県新公会堂 (奈良県奈良市)
Year and Date
2014-09-29 – 2014-10-01
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