2015 Fiscal Year Annual Research Report
鉄過剰が誘導する糖・脂質代謝異常―肝組織における新規発癌予防・治療標的分子の探索
Project/Area Number |
26830092
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
田中 宏樹 旭川医科大学, 医学部, 助教 (70596155)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 鉄 / コレステロール合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
原発性鉄過剰症やC型慢性肝炎による鉄過剰は、肝発癌に密接に関与し、瀉血、鉄キレート薬による鉄除去で慢性肝疾患化、肝癌発生のリスクは軽減される。生体内において鉄は、主には酸素運搬、エネルギー代謝における酵素反応、遺伝子発現調節など多彩な役割を担っている。一方、肝臓における鉄過剰はフェントン反応により発生する酸化ストレスを介して発癌関連遺伝子変異を誘発していると考えられている。しかし、生体内鉄の多彩な役割を考慮すると直接的遺伝子変異以外の要因による肝発癌への影響も着目すべき点である。本研究ではRNAシークエンシングを利用して鉄がエネルギー代謝遺伝子発現に与える影響に着目し肝発癌との関連を解析した。 C57BL6マウスを鉄含有食で経口投与飼育、あるいはデキストラン鉄を腹腔内投与しそれぞれの肝組織からRNAを抽出した。網羅的遺伝子発現解析の結果,鉄過剰モデル肝組織では、正常肝組織と比較しコレステロール合成関連酵素、蛋白質プレニル化酵素、脂肪酸β酸化酵素、糖代謝関連酵素の発現亢進が認められた。コレステロール合成の中間産物であるファルネシルピロリン酸は蛋白質プレニル化酵素によるRasなどの低分子G蛋白質をプレニル化する反応の基質となる。この反応は細胞増殖シグナル伝達の起点となる低分子G蛋白質の細胞膜への局在化を促進する。すなわち、鉄過剰により誘導されたコレステロール合成が、その中間産物を介して肝発癌に関連する細胞増殖シグナル伝達がを活性化されせる新たな経路が存在すると考えられた。一方、鉄を過剰に加えて培養したマウス初代培養肝細胞を用いた実験では、抗酸化剤を加えても蛋白質プレニル化酵素の発現亢進は持続した。 これらの結果は、肝臓における鉄過剰は酸化ストレスとは独立した経路によりコレステロール合成関連酵素、蛋白質プレニル化酵素の発現を亢進させ肝癌の細胞増殖を促進することを示している。
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Research Products
(1 results)