2014 Fiscal Year Research-status Report
YAP・TAZの過剰活性化を阻害する既存医薬品の乳がん幹細胞阻害薬としての応用
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26830113
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
奥 裕介 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (50626843)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞内シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
YAP/TAZの不活性化を導く既存医薬品として高脂血症治療薬フルバスタチン、慢性骨髄性白血病治療薬ダサチニブ、軟部腫瘍治療薬パゾパニブを同定した。これらの薬物はYAP/TAZの核移行を阻害し、YAP/TAZの標的遺伝子の発現を減少させた。これらは、YAP/TAZのリン酸化を促進していることを明らかにした。フルバスタチンは、低分子量Gタンパク質RHO-Aの脂質修飾を阻害し、YAP/TAZの核移行を阻害することが分かった。パゾパニブは、YAP/TAZの核移行を阻害するばかりでなく、他の化合物よりも強くYAP/TAZのユビキチン-プロテアソーム系に依存した分解を誘導することを明らかにした。乳がん細胞株のYAP/TAZに対する依存性と、これらの薬剤感受性には相関が見られた。特にYAP/TAZに対する依存性の強いMDA-MB-231細胞株の増殖はこれらの薬剤により強く阻害された。また、これらの薬剤はドキソルビシン、パクリタキセルに対する感受性を増大させることが分かった。以上の結果から、フルバスタチン、ダサチニブ、パゾパニブは乳がん細胞のYAP/TAZの機能を抑制する医薬品候補として有用である可能性が考えられた (in revision)。 パゾパニブによるYAP/TAZの分解の促進の分子機構を調べる目的、さらにはYAP/TAZの不活性化を導く化合物を同定する目的で、YAPのプロテアソーム依存的な分解誘導の評価系の構築を試みた。YAPのC末端にウミシイタケルシフェラーゼのN末端を、ユビキチンのN末端にウミシイタケルシフェラーゼのC末端を融合した遺伝子を作成した。作成したプローブはプロテアソーム阻害薬であるMG132の添加に依存したルシフェラーゼ活性を示したことから、YAPのユビキチン化をモニター可能であることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フルバスタチン、パゾパニブ、ダサチニブによるYAP/TAZの不活性化機構を明らかにした。フルバスタチン、ダサチニブについては、他のグループにより論文報告がなされたものの、これらに加えて新たにパゾパニブがYAP/TAZの不活性化を生じることを明らかにした。また、パゾパニブが他の薬剤と異なってYAP/TAZの分解を誘導することを明らかにした。さらに、これら既存医薬品のYAP/TAZ依存性乳がん細胞への応用研究を行い、YAP/TAZに依存性の乳がん細胞の増殖を強く抑制すること、既存抗癌剤の効果を増強することを明らかにした。本研究はすでに論文投稿済みである。さらに、本研究で同定したパゾパニブを含む化合物のYAP/TAZのユビキチン化の評価系の作成に着手しており、おおむね順調に研究が進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
YAP/TAZの活性化は、乳がん幹細胞の維持に関与する。これらの薬剤が乳がん幹細胞の増殖を抑制しうるかを検討する。方法としては乳がん幹細胞のマーカーとして知られているCD24low/CD44high細胞集団の増殖をflow cytometerにより分離してその自己複製能を、同定した化合物が抑制するかについて検討を加える。さらに、作成したYAPのユビキチン化プローブを用いて、pazopanibによるYAPのユビキチン化の促進を定量的に解析する。研究が予定よりも順調に進捗した場合には、本プローブを用いたYAPの分解を促進する化合物の探索を行う。
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Research Products
(1 results)