2015 Fiscal Year Research-status Report
遺伝学的手法による外来性ダンゴムシの生態特性の解明
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26830145
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
唐澤 重考 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30448592)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 外来種 / 遺伝的多様性 / ワラジムシ類 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)平成26年度は21地点76個体のmt DNAのCOI領域の塩基配列の決定を行ったが,平成27年度は新たに日本国内21地点100個体,および,チェコ共和国1地点10個体の標本の解析を行い,これにGenbankで取得できた8個体分のデータを加えて合計194個体で解析を行った.その結果,日本国内から5つのハプロタイプが発見され,昨年度から100個体増やして解析を行ったにも関わらず新たなハプロタイプは発見されなかった.このことから,国内のオカダンゴムシにはこの5つのハプロタイプが含まれていると考えるのが妥当と思われる. 2)奄美大島67地点,および,沖縄島69地点にてワラジムシ類の採集を行った. 3)同所的に生息が確認されていたオカダンゴムシとコシビロダンゴムシ科の一種の間における種間交雑の有無を調べるため,コシビロダンゴムシ科の一種12個体とオカダンゴムシ44個体のmt DNAのCOI領域と核DNAの28S rRNA領域の塩基配列を決定した.その結果,2種間での遺伝子交雑の存在は認められないことが分かった. 4)オカダンゴムシと同所的に高密度で見られるBurmoniscus属11種の種分類の再検討を行い,これらは同一種である可能性が高いことを形態および遺伝子データに基づき確認した. 5)日本産ワラジムシ類の標本データベースに新規データを加え,合計11507個体のデータベースを構築した. 6)在来種の種分類の検討に楕円フーリエ解析を適用し,その有用性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)オカダンゴムシを対象とした遺伝子実験は,mt DNA領域については昨年度からさらに100個体を加え合計176個体の解析が終わり,さらに精度の高い結論を導くことができた. 2)外来種オカダンゴムシと在来種コシビロダンゴムシ科の一種のmt DNAと核DNAを調べ,種間交雑がないことを明らかにした. 3)平成26年度と平成27年度で,奄美大島,沖縄島,宮古島および石垣島それぞれにおいて最低50地点以上でワラジムシ類の分布調査を行い,外来種の分布状況を明らかにすることができた. 4)琉球列島の多くの環境で優占種となるBurmoniscus属11種の分類学的再検討を行い,それらが同一種であることを示した. 5)楕円フーリエ解析による形態解析をワラジムシ類の種分類へ適用し,それらが効果的であるこを示した.
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Strategy for Future Research Activity |
1)mt DNAを解析した標本を対象にマイクロサテライト領域の解析を行い,mt DNA領域で認められたクレード間での交雑の有無を明らかにする.マイクロサテライト領域の予備実験はすでに終わっており,実験条件も確立しているため順調に進むと思われる. 2)在来種の種分類の研究を進め,琉球列島における外来種と在来種の分布環境を明らかにし,共存の可否について明らかにする. 3)種分類の研究については,従来の形態観察,分子データのみでなく,形態測定学的手法も取り入れて行う. 4)研究成果を随時,投稿論文として発表を行う.
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Research Products
(4 results)