2014 Fiscal Year Research-status Report
絶滅が危惧される日本産ハナシノブ属植物の集団動態および局所適応メカニズムの解明
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26830147
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Research Institution | Osaka Museum of Natural History |
Principal Investigator |
横川 昌史 大阪市立自然史博物館, その他部局等, 研究員 (30649794)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ハナシノブ属 / 絶滅危惧種 / 保全遺伝学 / 一塩基多型 / さく葉標本 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内産のハナシノブ属の分布状況等を整理するため、国立科学博物館などのハーバリウムにおいて、標本の確認を行った。加えて、すでに集めていた北海道大学のハーバリウムの情報や現地に詳しい専門家へのヒアリング結果を合わせて、主に国内のハナシノブ属植物の分布の中心地である北海道の状況を整理した。その結果、北海道の日高地方では広く分布しており、その他の地域では局所的に生育していることが明らかになった。生育状況が不明な青森県と富山県については、確度の高い情報は得られなかった。 2014年の6-8月にかけて、北海道においてハナシノブ属植物のサンプリングを行った。あらかじめ調べておいた分布情報に基づき、局所集団を重点的にチェックするなど、可能な限り広域でのサンプル収集に努めた。ハナシノブ属内の分類群はすべて絶滅危惧種であることもあり、過去に記録がある産地であっても見つけられないことも多かったが、10産地以上でサンプルを収集することができ、北海道内の分布域を概ね網羅できていると考えている。現地調査の際には、野外の生育状況や環境を可能な範囲で記録し、最終的な解析に使える情報としてまとめた。 葉緑体DNAに関する解析は、まだ不十分であり予備的なものにとどまった。その替わりとして、次世代シーケンサーによる大規模な一塩基多型解析について、予備的な実験などを行いながら、新たに提案されている手法も含めて検討を行った。DNAの多型データについては、成果発表できる段階までデータを集められなかったため、学会発表等を行えなかった。 全体を総括すると、解析に必要なサンプル収集は予想以上に順調であったが、DNAの多型解析については予定よりも遅れているので来年度以降の課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サンプリングは順調であったが、DNA解析がやや遅れている。主な原因は当初予想していなかった別の研究プロジェクトに関わることになり、そちらへエフォートが分散したことである。
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Strategy for Future Research Activity |
ハナシノブ属の分布状況については、昨年度で概ね抑えられた。今年度は1年目に調査が十分できなかった場所をカバーすることで、本研究に必要十分なサンプルを集めることができると考えられる。また、遺伝解析については早い段階で葉緑体DNAの解析を終わらせる必要がある。煩雑な作業の外注も含めて検討することで、効率的に実験を進めていきたい。大規模な一塩基多型解析は、昨年度に予備的な情報を収集できた。今年度のサンプリング状況によっては、本格的な一塩基多型の解析を今年度に行うことができるかもしれない。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していたDNA濃度を測定する機器について、より安価なもので本研究の目的が達成できることがわかったため、そちらを購入した。加えて、DNAの多型解析が予定よりも遅れていることで、主に物品費について予定よりも使用額が少なくなったためこのような支出になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
DNA多型解析については、昨年度予定していた分も加えて今年度の実験計画を立てており、昨年度使用しなかった物品費を使用する予定である。
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