2016 Fiscal Year Research-status Report
ショウジョウバエ・ムコ多糖代謝異常症モデルを用いたヘパラン硫酸分解の意義の解明
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26840041
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
神村 圭亮 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 主席研究員 (30529524)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヘパラン硫酸 / プロテオグリカン / ムコ多糖代謝異常症 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘパラン硫酸プロテオグリカンはコア蛋白質にヘパラン硫酸鎖が共有結合した糖タンパク質であり、細胞膜表面及び細胞外基質に存在する。ヘパラン硫酸プロテオグリカンは、ヘパラン硫酸鎖を介して分泌性の細胞増殖因子や細胞外基質分子などの多様な分子と相互作用することで、それらの活性を調節する。この様なヘパラン硫酸プロテオグリカンの多彩な機能はヘパラン硫酸の微細構造を形作るヘパラン硫酸修飾酵素によって調節されると考えられている。一方、ヘパラン硫酸はリソソームにおいて、多種類のグリコシダーゼ及びスルファターゼによって非還元末端から分解される。重要なことに、ヒトにおいてこれらの分解酵素の異常は骨格異常や精神遅滞を伴うムコ多糖代謝異常症を引き起こすことが知られている。以上のことから、ヘパラン硫酸の分解過程は生体内において極めて重要であることは分かっているが、分解酵素の異常がどの様なメカニズムにより発達異常を引き起こすのかは未だ不明である。そこで、本研究ではムコ多糖代謝異常症のモデルとしてショウジョウバエを用いて解析を行っている。これまでヘパラン硫酸分解酵素の一つであるイズロニダーゼの機能に注目し解析を行った結果、イズロニダーゼの機能減少がBMPシグナルの低下を引き起こし、翅の形態異常を引き起こすことを見出している。そこで平成28年度では、イズロニダーゼがどの様にBMPシグナルを調節するのか詳細な解析を行った。その結果、イズロニダーゼの機能減少個体ではヘパラン硫酸プロテオグリカンのコア蛋白質の減少により発生異常が起きる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体内におけるヘパラン硫酸分解酵素の役割を調べるため、イズロニダーゼトランスジェニックRNAi個体を用いて解析を行った。これまでの我々の解析から、イズロニダーゼRNAi個体ではコア蛋白質であるDlpのレベルが減少し、BMPのシグナル活性が低下することが分かっている。そこでイズロニダーゼの機能減少によるBMPシグナルの低下が、Dlpによって引き起こされた可能性を調べた。イズロニダーゼRNAi個体においてDlpの過剰発現を行ったところ、BMPシグナルの活性及び翅脈の形態異常が部分的に回復した。以上の結果から、翅の発生においてイズロニダーゼは細胞膜表面のDlpのレベルを調節することでBMPシグナルを調節することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
イズロニダーゼの機能減少がどの様に細胞膜表面のDlpのレベルを調節するのかは未だ不明である。そこで今後はその分子メカニズムを明らかにするため、イズロニダーゼの機能減少がDlpの発現や細胞内トラフッキングにどのような影響を与えるのか免疫組織化学染色法により詳細に調べる。またリソソームの機能不全がDlpのレベルを調節する可能性も調べるため、イズロニダーゼ以外のリソソーム構成分子の機能減少がDlpのレベルにどの様な影響を与えるのか解析する予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度は遺伝学実験と形態観察が中心であり、消耗品等を多く購入しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞内トラフッキングにおけるイズロニダーゼの役割を調べるため、免疫組織化学染色法に用いる抗体等の購入、ハエの輸送費、及び謝金に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)