2015 Fiscal Year Research-status Report
受精によって活性化される転写ネットワークの下流で植物体軸を構築する実働機構の解明
Project/Area Number |
26840093
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
植田 美那子 名古屋大学, 理学研究科(WPI), 講師 (20598726)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 体軸形成 / 細胞極性 / 植物発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物において、体軸の形成は受精卵の細胞内極性にまで還元されるが、受精卵を極性化させるしくみ、および受精卵の細胞極性を胚のパターン形成に反映するしくみについては、これまでほとんど分かっていなかった。そんななか、私はシロイヌナズナの受精卵極性と胚のパターン形成の両者に必須の転写因子群を独自に見出し、その下流機構の解析を通じて、細胞の極性化と組織のパターン形成の両者を制御する分子メカニズムの理解を目指している。当年度は、シロイヌナズナの胚や受精卵を含む母組織(胚珠)のin vitro培養系の確立に成功し、それと組織深部の高精細な観察を可能とする二光子顕微鏡システムを組み合わせることで、受精卵や胚の発生過程の精緻なライブイメージング法を立ち上げた(Maruyama et. al., 2015; Gooh et. al., 2015; 投稿準備中)。受精卵が極性化して非対称分裂に至る動態(頂端-基部軸の確立)や、胚内部の各部位が異なる発生運命を獲得する過程(体軸に沿ったパターン形成)をともに可視化できたことで、その順序やタイムスケールなど、従来の形態観察では得られなかった知見を数多く得ることとなった。また、体軸形成を制御するさまざまな因子の変異体でもライブイメージングを進めており、受精卵の極性化や胚のパターン形成のどの局面が損なわれているかを特定できつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究室が新しい建物に移転したことに伴って植物栽培室を新設したが、そこでの温湿度調節装置にトラブルが発生したことにより、実験植物の整備にかかる期間が予想外に延びた。しかしながら、植物生育が思わしくなかった時期にも顕微鏡システムの最適化や多様な蛍光マーカーの作成を進めたため、最終的には問題なくライブイメージング法を立ち上げることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さまざまな変異体において、受精卵の極性や胚のパターン形成のライブイメージングを完遂させることで、それらが体軸形成に果たす役割を解明する。また、これまでの解析結果によって見えてきたメカニズムをさらに精査するべく、第二弾となるマーカー株を現在作成中なので、それらも駆使したライブイメージングを行うことで、植物の体軸獲得とパターン形成のしくみをより詳細に解明していく。
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Causes of Carryover |
新設した植物栽培室に設置されたエアコンの能力不足により、室温と湿度の異常上昇が発生した。温湿度測定装置や除湿機の増設などの対策を講じたものの、安定的な植物生育環境の構築に予想以上の時間がかかり、結果的に実験植物の確立時期が遅延した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
受精卵の極性化や胚のパターン形成に異常を示す変異体へのイメージングマーカーの導入が再開したので、それらの観察に用いる顕微鏡関係の消耗品(ガラスボトムディッシュや水銀ランプなど)を購入する。また、研究成果を取りまとめるために必要となるデータ追加用の分子実験の遂行費や、論文投稿や学会参加の費用にもあてる。
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[Journal Article] Rapid Elimination of the Persistent Synergid through a Cell Fusion Mechanism2015
Author(s)
Daisuke Maruyama, Ronny Vo¨ lz, Hidenori Takeuchi, Toshiyuki Mori, Tomoko Igawa, Daisuke Kurihara, Tomokazu Kawashima, Minako Ueda, Masaki Ito, Masaaki Umeda, Shuh-ichi Nishikawa, Rita Groß-Hardt, and Tetsuya Higashiyama
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Journal Title
Cell
Volume: 161
Pages: 907-918
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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