2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26840127
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中野 隆文 広島大学, 教育学研究科, 特別研究員(PD) (50723665)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 国際研究者交流(タイ) / 国際研究者交流(シンガポール) / ヒル類 / 系統分類 / 新種 |
Outline of Annual Research Achievements |
クガビル類については,西日本より得られた標本に基づいた分類学的研究を進展することが出来た.特に中国地方に分布する1種,そして四国と淡路島より得られた4種について,それぞれを新種として発表することが出来た.平成27年度中に記載したこれら種を加えると,クガビル属は全17種となり,ヒル類の既知属の中でも高い種多様性を有していることが明らかになった. さらに,クガビル類については,全既知種を対象とした分子系統解析によって,体サイズの中でも体長が20 cmを超える大型化の形質状態,そして一体節当たりの体環数が8体環である形質状態が,クガビル属において平行的に進化してきたことを明らかにした.これら体サイズの違い,あるいは1体節当たりの体環数の違う種が,同所的に分布していることから,クガビル属の高い種多様性が維持されている要因として,これら形質状態が重要である可能性は高い. イツウコウビル類については,サラワク州より採集された個体についてシンガポール大学の共同研究者よりサンプル提供を受け,形態観察と分子系統解析による分類学的位置の確定を行った.さらにタイの西部においてイツウコウビル科ヒル類を対象とした採集調査を行った結果,インドシナ半島より初めて本科ヒル類を得ることが出来た.タイより得られたサンプルについても形態観察と分子系統解析を行い,その分類学的位置を明らかにした.結果,イツウコウビル科の再定義が必要であることが明らかになり,特に今まで本科を定義していた胃通管が,イツウコウビル類の共有形質ではない可能性が高くなった.もともと,胃通管はクガビル類とイツウコウビル類の共有派生形質であると考えられていたこともあり,本知見は,陸棲捕食性ヒル類の分類,さらにはそれらヒル類の進化を考える上でも重要な視座を与えるものである.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クガビル類については,網羅的な探索によって種多様性を次々に明らかにすることが出来ている.特に,平成27年度中に中国・四国地方から5新種を明らかにすることが出来たのは,大きな成果である.クガビル類の種多様性はその大枠が掴める程に,十分なサンプルが揃っており,さらなる新種記載の目星も着いているため,最終年度中に種多様性の全容に肉薄することが出来る,十分な成果を得ることが出来た. イツウコウビル類については,既知種の再検討が予定よりも大幅に遅れているが,新手に得られたサンプルに基づいた系統分類学的研究により,高次分類の見直しという重要な課題が明らかになり,なおかつ平成28年度中には得られた知見をまとめる段階まで研究を進められたため,平成27年度の研究について,おおむね順調に進展していると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は本研究計画の最終年度であるため,今まで得られたサンプルに基づいて蓄積した研究成果を可能な限り論文化し,公表するよう努める.特にクガビル類については,東北地方と九州から得られているサンプルについて,分類学的位置を明らかにすると共に,分子系統解析を行い,クガビル属の種多様性解明に向け研究を進める. イツウコウビル類については,サラワク州とタイより得られたサンプルに基づいた成果を早急に論文化し,国際学術雑誌に投稿する.くわえて,既知種のタイプ標本の調査を可能な限り実施する予定である.
|
Causes of Carryover |
イツウコウビル科サンプルについて想定していたサンプル数より少なく,実験数が予想より伸びなかったため残額が発生した.年度内に消耗品等で使用することも考えたが,次年度に繰り越し,PCR用の試薬やシークエンスのための共同利用施設利用費に使用するのが適当であり,本研究計画に資すると考えたため,次年度使用額が生じた.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
発生した次年度使用額については,年度初めに予定している分子実験用試薬の購入と,DNA塩基配列を得るためのシークエンスサービス利用費として使用する予定である.特にPCRに係る試薬の購入に充て,次年度の実験が滞りなく行える状況を整える.
|
Research Products
(7 results)