2015 Fiscal Year Research-status Report
イノシシ属の古DNA解析を用いた、先史人類の島への移動と適応の解明
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26840157
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
高橋 遼平 山梨大学, 総合研究部, 助教 (40728052)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 動物考古学 / 古代DNA解析 / 家畜化 / イノシシ・ブタ / 先史人類学 / 琉球列島 |
Outline of Annual Research Achievements |
太平洋島嶼域を舞台に先史人類がどのように移動・適応したか探る事が本研究の目的である。先史人類の移動の指標については食料として盛んに利用されたイノシシやブタに着目し、遺跡から出土した骨と現生個体のDNA解析を行う。 本年度は海外の遺跡出土資料の解析としてベトナムのHang Cho遺跡(約10,000年前)とMan Bac遺跡(約3,500年前)の解析(各22個体)を実施した。しかしその保存状態の悪さからDNA解析の成功率は極めて低く、遺跡で利用されていたイノシシ・ブタの遺伝的特徴を十分に把握できなかった。そこで2016年2月にベトナム考古学院を訪ね追加資料のDNAサンプリングを実施した。これらの追加資料の解析は平成28年度に実施する。 これに加えて琉球列島に生息する野生イノシシであるリュウキュウイノシシ(現生個体)のDNA解析を行った。リュウキュウイノシシが生息する全ての島由来のDNA資料(肉片や骨)を野外調査で採集し、ミトコンドリアDNAの解析を行った。この結果全ての島の個体は遺伝的に近縁であり、同一の系統に由来する野生イノシシ集団である事が強く示唆された。琉球列島の遺跡出土資料を扱った過去のDNA解析では、前述したリュウキュウイノシシと遺伝的に異なる特徴を持つ個体が複数遺跡で検出されている。本解析結果と先行研究の結果を照らし合わせ、先史時代の琉球列島では人類によるイノシシ・ブタの持ち運びが生じていた可能性を示した。本研究成果は論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度はベトナムの遺跡出土資料の解析を主に行ったが、その保存状態は非常に悪く、同遺跡の資料について複数の解析手法を試みる事となった。このため当初予定していた他の遺跡出土試料の解析が遅れたほか、ベトナムの遺跡出土試料については追加試料のサンプリングと再解析の必要が生じた。これらから「やや遅れている」と判断した。再解析の際は次世代シーケンサー解析などを利用し、解析成功率や解析精度の向上を目指す。 解析に用いる資料のサンプリング状況は順調である。ミクロネシアのファイス島先史遺跡や琉球列島の先史遺跡由来の資料の採集は既に済んでいるため、平成28年度に解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の調査で追加サンプリングしたベトナムの先史遺跡出土資料のDNA解析をまず実施する。続いてミクロネシアのファイス島先史遺跡出土資料、琉球列島の先史遺跡出土資料等の解析を行う。DNA解析の結果に年代測定や同位体分析の結果、考古学の知見等を合わせ、先史人類の移動の時期や経路、イノシシやブタが先史人類の島への移動や適応にどのように貢献したのかといった事を考察する。
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Causes of Carryover |
ベトナムの遺跡出土試料の解析では試料の保存状況が悪かったため、データを得るために複数の解析を行った。これを受けて実験計画を再調整し、平成27年度に行う予定であった一部の遺跡出土試料の解析を平成28年度に行う事とした。これらの試料の解析費用として、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺跡出土の骨からのDNA抽出に用いる試薬やPCRプライマー、DNAポリメラーゼ等の実験消耗品を購入する。
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Research Products
(3 results)