2014 Fiscal Year Research-status Report
アーキアにおけるイノシトールキナーゼとリン酸化イノシトールの生理学的役割の解明
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26850049
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 喬章 京都大学, 工学研究科, 助教 (60571411)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イノシトールキナーゼ / アーキア / 代謝 / 遺伝子破壊 / 反応産物同定 / 発現活性化条件同定 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、超好熱性アーキアThermococcus kodakarensis由来のイノシトールキナーゼ(TK2285)がイノシトールのどの位置のヒドロキシル基をリン酸化しているかを同定することを目指した。TK2285反応産物のNMR解析とキラルカラムを用いたLC-MS解析に加えヒドロキシル基が欠けたイノシトール誘導体に対する活性測定解析を行った。その結果、本酵素はイノシトールの3位のヒドロキシル基をリン酸化していることが明らかとなった。イノシトール3-リン酸は、浸透圧調整物質の生合成に利用されたり、グルコース6-リン酸に変換された後に解糖系によって代謝されることも可能である。よって、リン酸化されていないイノシトールを産生する経路は不明であるが、本酵素によりイノシトールを再び代謝できる化合物に変換、つまりリサイクルできる可能性が示唆された。 次に、TK2285認識抗体を用いたWestern blot解析により、TK2285の発現を活性化する培地条件を検討した。その結果、多糖を添加した培地(解糖条件)に比べてピルビン酸を添加した培地(糖新生条件)の方がTK2285の発現量が多いことが明らかとなった。また、ピルビン酸培地にさらに4種のヌクレオシド(アデノシン、ウリジン、グアノシン、シチジン)を添加した培地で発現量が明確に上昇した。今後、これらの培地条件でTK2285の発現量が上昇する理由を検討し、生理的役割の解明につなげる。 さらにTK2285遺伝子破壊株を作製し、その増殖が抑制される培養条件を探索した。上記の解糖・糖新生条件で培養を行ったところ、解糖条件において増殖が若干悪化した。意外なことにTK2285の発現が活性化される条件と破壊株の増殖が抑制される条件は異なっていた。また、培地にイノシトールを添加した条件での培養を検討したが、野生株ですら増殖は亢進せず、少なくとも現在検討している条件では外部からイノシトールを取り込んで同化している可能性は低いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の計画として、A:イノシトールキナーゼがリン酸化するヒドロキシル基の同定、B:イノシトールキナーゼの発現を活性化する条件の検討、C:イノシトールキナーゼ遺伝子破壊株の作製および解析、の3つを予定していた。上述の研究実施の概要の通り本年度は、A:イノシトールキナーゼがイノシトールをリン酸化する際のリン酸化ヒドロキシル部位が3位であることを同定し、B:TK2285が解糖条件より糖新生条件で発現量が多いこと、およびピルビン酸添加培地にヌクレオシドを添加するとさらに明確に発現が活性化されることを明らかにし、C:TK2285遺伝子破壊株の作製に成功し、解糖条件で若干増殖が抑制されることを明らかにした。発現活性化条件に関してはまだ検討しきれていない条件もあるが、予定していた3つ全ての項目についてポジティブな結果を得ることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
超好熱性アーキア由来のイノシトールキナーゼの反応産物が既知の経路により利用可能なイノシトール3-リン酸であることが判明したが、どこもリン酸化されていないイノシトールがどのように産生するかはいまだに不明である。それを明らかにできれば本酵素の生理的役割が解明できることが期待できる。よって今後はイノシトール産生経路の解明に焦点を絞って研究を進める予定である。 まずは今回同定した条件以外のTK2285活性化条件の探索を引き続き行う。具体的にはストレス条件およびストレス緩和条件における発現量を検討する。例えばストレス条件としては高浸透圧条件や高温条件を考えている。また、イノシトール産生経路の同定を目的として、当初の計画の通り、DNAマイクロアレイ解析を行う。具体的には1. 宿主とTK2285遺伝子破壊株の比較、2. myo-イノシトール添加培地と非添加培地の比較およびTK2285反応産物添加培地と非添加培地の比較、3. TK2285が活性化される培地とされない培地(本年度に同定したピルビン酸+ヌクレオシド添加培地とピルビン酸培地)の比較を行う。2つめのmyo-イノシトール添加培地に関しては、平成26年度に明らかにしたように明確な増殖の亢進は見られなかったものの、各遺伝子の転写量に変化がある可能性も考えられるため、解析を行う予定である。また、本年度にあらたに発現を活性化する条件が見つかった場合はそれについても解析を行う。 このマイクロアレイ解析により、イノシトール代謝に関連すると予測される遺伝子が同定できた場合は、その組換え型タンパク質の活性解析および遺伝子破壊株の作製・解析を進める。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] Novel metabolic pathways in Archaea2014
Author(s)
Takaaki Sato, Riku Aono, Sanae Hodo, Yuta Yoshii, Tadayuki Imanaka, and Haruyuki Atomi
Organizer
2014 Korean Society for Microbiology and Biotechnology International Symposium & Annual Meeting
Place of Presentation
Busan, Korea
Year and Date
2014-06-26
Invited
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[Presentation] Functional characterization of three ribokinase family proteins in the hyperthermophilic archaeon Thermococcus kodakarensis2014
Author(s)
Takaaki Sato, Riku Aono, Masahiro Fujihashi, Yukika Miyamoto, Keiko Kuwata, Eriko Kusaka, Haruo Fujita, Kunio Miki, Tadayuki Imanaka, and Haruyuki Atomi
Organizer
American Society for Microbiology 114th General Meeting
Place of Presentation
Boston, USA
Year and Date
2014-05-18