2015 Fiscal Year Research-status Report
大雨による斜面崩壊が地表攪乱依存樹種の更新に果たす役割
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26850104
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
野口 麻穂子 国立研究開発法人 森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (00455263)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地表攪乱 / 斜面崩壊 / 冷温帯林 / 実生 / 生存率 / 樹高 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、斜面崩壊が地表攪乱依存樹種の更新初期過程に果たす役割とそのメカニズムを明らかにすることを目的とする。本年度は、2013年8月の記録的な大雨によって多数の斜面崩壊が発生した冷温帯林の山地小流域において、斜面崩壊跡地および隣接する攪乱を受けていない林床を対象に、昨年度に引き続き、シードトラップによる種子供給量の把握および樹木実生の発生、定着、生存の過程の観測を実施した。 斜面崩壊発生直後の2013年秋季に落下した健全種子の密度は、ブナでもっとも高く、サワグルミがこれに続いた。2014年生の実生は、林冠構成種の多くで林床より斜面崩壊跡地に有意に偏って発生した。種子サイズの小さいスギとウダイカンバでは、実生の発生は崩壊跡地にほぼ限られ、2015年5月以降まで生残がみられたのは斜面崩壊跡地のみであった。一方、斜面崩壊跡地においてもっとも実生の密度が高かった樹種はサワグルミであり、林冠構成種の実生の総数の60%以上を占めた。また、サワグルミは、斜面崩壊跡地における2015年10月時点の実生の生存率および平均樹高についても、主要樹種のうちでもっとも高い値を示した。 本研究で対象とした斜面崩壊は、攪乱の発生から2生育期間を経過した時点で、攪乱直後の種子の供給が比較的多く、かつ斜面崩壊跡地で実生の発生率、生存率、樹高のいずれにおいても高い値を示したサワグルミの更新に、もっとも有利に働いていると考えられた。ただし、斜面崩壊の発生域ではサワグルミの樹高が低い傾向がみられ、容積重が大きい等の土壌条件が成長を抑制している可能性が考えられた。一方、スギとウダイカンバについて、実生の定着がみられるのは斜面崩壊跡地のみであったが、凶作による落下種子不足および、低い生存率と樹高成長により、斜面崩壊跡地においても優占には至っていないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、平成26年度に設置した調査区において、地表攪乱依存樹種および競合樹種の種子供給量および実生の発生、生存、成長のモニタリングを予定通り実施した。また、前年度に得られた土壌サンプルの解析を進めた。平成26年度および平成27年度に得られたデータを解析し、その結果に基づいて学会発表を行った。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に設定した調査区における現地調査を継続して実施するとともに、最終年度にあたりデータのとりまとめを行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度に、研究対象とする樹種の種子の結実量が多かったことから、平成28年度のサンプル調製の作業量が増えることが見込まれ、当初予定より多くの研究補助に係る賃金を要する見込みとなったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
おもに平成28年度の研究補助に係る賃金として使用する計画である。
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Research Products
(1 results)