2014 Fiscal Year Research-status Report
癌組織選択的に抗癌剤を持続的に放出する、難治性膵臓癌治療薬の開発と有用性評価
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26860031
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
中村 秀明 崇城大学, 薬学部, 助教 (30435151)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | すい臓がん / 高分子抗がん剤 / ピラルビシン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、難治性すい臓がんに対する治療薬の作製を目指し、がん組織集積性を持つ高分子型抗がん剤に着目して研究を行った。本年度は主に、in vitroでの検討ならびに次年度に使用するルシフェラーゼ発現細胞株の作製を行った。 はじめに、ヒトすい臓がん細胞(SUIT2)に対するアントラサイクリン系薬剤の細胞傷害性ならびに細胞内への取り込みを検討した。アントラサイクリン系薬剤の一つであるピラルビシン(THP)では、同系統薬のドキソルビシン(DOX)やエピルビシンと比べて、4~10倍以上高い細胞傷害性や細胞内取り込みが見られた。 次に、THPおよびDOXを用いて高分子ポリマー結合型制がん剤(それぞれP-THPおよびP-DOX)を作製した。P-THPおよびP-DOXとも同等の薬物含有量(約10 wt%)、分子量(約40 kDa)、粒子径(約8 nm)を持つ。SUIT2細胞を用いてP-THPとP-DOXを比較検討したところ、P-THPは10倍以上高い細胞傷害性と細胞内取り込みを示すことを明らかにした。SUIT2以外の多くのがん細胞(肺がん、肝がん、食道がん、大腸がん由来細胞)においても、同様の結果を得ている。SUIT2皮下移植担がんマウスにおける抗がん効果の検討では、P-THPはドキソルビシン含有薬剤に比べて高い抗がん効果を発揮した。これらの結果はすい臓がんに対するP-THPの有効性を示唆している。 次年度に予定している同所移植担がんモデルに用いるルシフェラーゼ発現SUIT2細胞はすでに作製を完了しており、予備検討として同モデルの作製確認も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画は、1.高分子ポリマー結合型THPの作製、2.培養細胞における評価、3.ルシフェラーゼ発現すい臓がん細胞の作製を研究の中心に据えた。 1.高分子ポリマー結合型THP(P-THP)の作製に関しては当初計画通りに作製できており、薬物含量、分子量、粒子径など一定の物性値を持つP-THPを作製できる現状にある。さらに、研究計画に記載した3種類のP-THPの作成も完了している。 2.培養細胞を用いた評価に関しては、細胞傷害性、細胞内取り込み量および細胞内への取り込みメカニズム、細胞内分布の検討を実施した。 3.ルシフェラーゼ発現ヒトすい臓がん細胞の作製は完了している状態である。さらに次年度予定の同所移植モデルの予備検討に着手している。SUIT2皮下移植がんを用いた検討にも一部着手しており、多少ではあるが、次年度の計画を前倒しして進展している状況である。 以上のように、本年度はおおむね計画通りに研究を遂行できている状況にあると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度はin vivoでの評価を中心として行う。SUIT2皮下移植担がんマウスならびにSUIT2すい臓内移植担がんマウスの作製予備検討は平成26年度に行い、移植がんが適当な大きさになるには、およそ2~3週間程度の日数が必要であった。27年度は必要に応じて、同担がんモデルマウスを作製する。体内動態および組織内薬物分布の測定に関しては計画通りに実行する。抗がん試験については多少の追加実験を行う。すい臓内移植担がんマウスのがん組織サイズを測定するために、移植細胞由来の発光測定をすることとのみ計画していたが、薬物投与2~3週間後に回復し腫瘍重量を測定することで、より詳細ながん組織サイズの測定を行う。 本年度は1種類のすい臓がん細胞(SUIT2)のみを用いた試験を行ってきた。本研究で作成した高分子抗がん剤の普遍性を確認するため、次年度は他のすい臓がん細胞を用いた実験を、当初計画と平行して行う。 実施計画に大きな遅延や変更もなく遂行できており、平成27年度も当初計画どおりに遂行可能と考えている。
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Causes of Carryover |
本年度はおよそ、85,000円の予算を次年度に繰り越した。本年度は国内学会への参加を見送ったため残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はSUIT2以外の他のすい臓がん細胞を用いた実験を平行して行う。そのための細胞購入費およびin vitroの測定試薬の購入費として使用する。
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Research Products
(8 results)