2014 Fiscal Year Research-status Report
TICAM-1シグナロソーム構成因子の同定、及び機能解析
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26860033
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
舟見 健児 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (00421983)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | TLR3 / TICAM-1 / dsRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
TLR3は自然免疫を担当するパターン認識受容体であり、二本鎖RNAを認識すると炎症性サイトカインやインターフェロン産生を引き起こす。TLR3を介したシグナル伝達の際にはアダプター分子であるTICAM-1を含む分子集合体(TICAM-1シグナロソーム)が形成されることが分かっている。本研究の目的は、TICAM-1シグナロソームの構成成分を同定し、シグナル伝達の分子機構を解明することである。 ヒト由来の培養細胞である HEK293にTICAM-1を強制発現させると、TLR3を介したシグナル伝達の時と同様にTICAM-1シグナロソームが形成される。TICAM-1に付加した分子タグを認識する抗体を用いてTICAM-1 シグナロソームを精製し、含まれる分子についてマススペクトルを用いて解析した。ネガティブコントロールとしてシグナロソーム形成能を持たない変異体TICAM-1を用いて同様の解析を行なった。 この結果として、活性型のTICAM-1シグナロソームと特異的に分子集合体を形成する分子を10種類以上同定することが出来た。今回同定した分子の中には、TLR3を介したTICAM-1シグナロソーム形成、及び下流のシグナル伝達に関与するものが含まれていると考えられる。次年度における解析を通じて、TLR3を介したパターン認識についてより詳しく明らかとなり、ひいては癌免疫や抗ウイルス免疫を制御する新しい方法を開発できると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、TLR3刺激に伴うシグナル伝達に必須であるTICAM-1シグナロソーム中に含まれる分子の同定を試みた。HEK293細胞に野生型のTICAM-1, もしくはシグナロソーム形成能を失った変異体TICAM-1を発現させ、TICAM-1に付加したタグを認識する抗体を用いてTICAM-1シグナロソームの精製を行なった。更に、精製した活性型、または非活性型のTICAM-1シグナロソームに含まれるタンパク質について、マススペクトルを用いて網羅的解析を行なった。活性型のTICAM-1由来のサンプルから検出され、なおかつ非活性型のTICAM-1由来のサンプルからは検出されないペプチドは、活性型TICAM-1に特異的に含まれる蛋白分子に由来すると考えられる。解析を行なった結果、活性型TICAM-1シグナロソームに特異的に含まれる蛋白分子の候補を10種類以上見つけ出すことができた。一方で、得られた候補分子が実際にTICAM-1シグナロソーム形成に関与しているかどうかについては、本年度の研究では確認するには至らなかった。今回同定した候補分子の機能解析を行なうことで、TLR3を介したTICAM-1シグナロソーム形成、及び1型インターフェロンの産生へといたるシグナル伝達に重要な因子を見つけ出すことが、来年度の研究で果たすべき第一の課題であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度における解析では、本年度にマススペクトルで同定した、TICAM-1シグナロソームに特異的に結合する候補分子について機能的に解析を行ない、実際にTICAM-1を介したシグナル伝達に重要な役割を果たす因子を見つけ出すことが大きな課題となる。実験手法としては、siRNAを用いたノックダウンの実験がこの目的にかなうと考えている。TICAM-1シグナルに影響を及ぼす分子を同定した後、樹状細胞やマクロファージといった、自然免疫に重要な役割を担っている免疫細胞を用いて、同定した蛋白分子が免疫細胞に置けるTICAM-1シグナルにも寄与するかどうかを明らかにしたい。さらに余裕があれば、現研究室において盛んに解析が行なわれている抗癌免疫に寄与するアジュバント分子としてのTLR3リガンドについて、同定した活性型TICAM-1シグナロソーム構成因子がどのように関与しているかについて解析を行なう。抗がん免疫に寄与するアジュバントとして働くTLR3 を介したシグナルの研究は、本研究室において盛んにおこなわれており、アジュバント活性として都合がよい反応を選択的に活性させる手段を見いだしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究の開始時には、今年度中にTICAM-1シグナロソームに含まれる候補分子を用いて、TICAM-1シグナルに機能的に関与する分子を同定する実験まで行なう予定であった。しかし、現在の進捗状況は、マススペクトルによって活性型のTICAM-1シグナロソームに特異的に含まれる候補分子を得たところである。TICAM-1 シグナロソーム形成から1型インターフェロン産生にいたるシグナル伝達にこれらの分子がどんな関与をしているかについては次年度に解析することになる。機能分子を同定するために必要な経費は、次年度で使用することになる。更に、本年度は情報収集のための出張を行なわなかったため、旅費として予定していた分の費用を浮かせることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の研究においては、当初予想された分に比べて研究費の額を抑えることができた。次年度に置ける解析では、TLR3を介したシグナル伝達にTICAM-1シグナロソームを構成する候補分子がどのように関与するかについて、siRNAを用いたノックダウン実験を行なう必要がある。この機能的解析には各分子のノックダウン実験をするためのRNAオリゴやその他試薬類が必要であり、今年度において使用しなかった分の費用を利用する予定である。さらに、研究の展開のために必要な情報収集を行なうための学会参加に伴う旅費の支出も見込まれる。
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