2014 Fiscal Year Research-status Report
内皮間葉転換を介した糖尿病性血管石灰化病変形成におけるERK5の役割解明
Project/Area Number |
26860172
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
石澤 有紀 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (40610192)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 血管石灰化 / ERK5 / 血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究課題では、血管内皮細胞におけるERK5の活性化が血管石灰化病変の形成に関与するか否かについてERK5内皮特異的欠損マウスを用いて検討することを目的としている。 これまでに、石灰化抑制作用が示唆されているHMG-CoA還元酵素阻害剤の一つであるピタバスタチンが、培養ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)においてERK5を活性化することを明らかにした。このピタバスタチンによるERK5活性化は上流にあるMEK5の活性化は介しておらず、直接的にERK5の転写活性を上昇させていることが示唆された。さらにERK5活性化は一酸化窒素合成酵素(eNOS)のmRNA発現を増加させた。また、腫瘍壊死因子(TNF-α)によるvascular cell adherent molecule-1の発現増加はピタバスタチンによるERK5活性化を介して抑制された。以上に示されるように培養細胞においてピタバスタチンによるERK5活性化を介した内皮保護作用が確認されたため、次にマウスを用いてピタバスタチンによる血管内皮細胞保護効果におけるERK5の関与を確認した。ストレプトゾトシン誘導糖尿病モデルマウスにおいて頸動脈壁への白血球の接着が増えるが、ピタバスタチンの投与はそれを抑制した。ERK5内皮特異的ノックアウトマウスにおいてその効果は消失した。よって、血管内皮細胞でのERK5の活性化が糖尿病時の血管炎症に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。さらに、心移植モデルにおいて移植心の急性拒絶反応がピタバスタチンによって抑制されるが、ERK5内皮特異的ノックアウトマウス由来の移植心においてはピタバスタチンの抑制効果が消失しており、心筋ではなく内皮細胞のERK5活性化が、急性拒絶反応時の炎症抑制に寄与していることが明らかとなった。以上の研究結果をJournal of Immunology(2014)に報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内皮細胞におけるERK5活性化の重要性を論文報告した。 また、糖尿病の血管炎症に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 初年度の科学研究費に拠り、本研究で使用している遺伝子改変動物を現在所属している徳島大学に導入することが実現した。現在順調に交配を進めており、更なる動物実験の追加を予定している。 血管平滑筋細胞における無機リン刺激による石灰化の細胞内シグナル伝達について明らかにしてきた。rho-kinaseおよびcyclophilin Aの自己分泌機構が石灰化シグナルに関与している可能性を明らかにした。これらのシグナルが内皮細胞においても石灰化促進に寄与しているか否かについて今後検討を続ける予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.当初の計画通り、ERK5内皮特異的ノックアウトマウスをVE-Cadherin-Creマウスを用いて作製し、頸動脈部分結紮術あるいはストレプトゾトシン負荷による動脈硬化・石灰化モデルを作製する。VE-Cadなど内皮細胞マーカーおよび間葉系細胞マーカーについてEn Face染色を行い発現を観察する。 2.すでにピタバスタチンがERK5を介して内皮保護効果を示すことを明らかにしたので、さらに培養内皮細胞を用いて高血糖刺激による内皮間葉転換に影響を与えるか否かを検討する。 3.糖尿病モデルマウスおよびヒト石灰化病変におけるERK5、内皮間葉転換関連蛋白の発現を検討する。
|
Causes of Carryover |
当初、遺伝子改変動物の輸入・SPF化等、所属分野への導入に係る諸費用として計画していたものに関して、国内の研究室からの動物の分与が可能となったために大幅に低予算で実現した。更に導入に際し手続きなどに時間を要したため、その後の飼育費や、遺伝子改変のジェノタイピングに使用する消耗品などに使用する予定であった経費が次年度に繰り越されることとなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度への繰り越し分については当初の予定通り遺伝子改変動物の飼育費・餌代・ジェノタイピングに必要な消耗品の購入などに充てる。
|
Research Products
(18 results)
-
[Journal Article] Angiotensin II alters the expression of duodenal iron transporters, hepatic hepcidin, and body iron distribution in mice2015
Author(s)
Soichiro Tajima, Yasumasa Ikeda, Hideaki Enomoto, Mizuki Imao, Yuya Horinouchi, Yuki Izawa-Ishizawa, Yoshitaka Kihira, Licht Miyamoto, Keisuke Ishizawa, Koichiro Tsuchiya, Toshiaki Tamaki
-
Journal Title
European Journal of Nutrition
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed
-
-
[Journal Article] Deletion of hypoxia-inducible factor-1α in adipocytes enhances glucagon-like peptide-1 secretion and reduces adipose tissue inflammation.2014
Author(s)
Yoshitaka Kihira, Mariko Miyake, Manami Hirata, Yoji Hoshina, Kana Kato, Hitoshi Shirakawa, Hiroshi Sakaue, Noriko Yamano, Yuki Izawa-Ishizawa, Keisuke Ishizawa, Yasumasa Ikeda, Koichiro Tsuchiya, Toshiaki Tamaki, Shuhei Tomita.
-
Journal Title
PLoS One
Volume: 9
Pages: e93856
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
[Journal Article] Identification of Activators of ERK5 Transcriptional Activity by High-Throughput Screening and the Role of Endothelial ERK5 in Vasoprotective Effects Induced by Statins and Antimalarial Agents2014
Author(s)
Nhat-Tu Le*, Yuichiro Takei*, Yuki Izawa-Ishizawa*, Kyung-Sun Heo, Hakjoo Lee, Alan V. Smrcka, Benjamin L. Miller, Kyung Ae Ko, Sara Ture, Craig Morrell, Keigi Fujiwara, Masashi Akaike and Jun-ichi Abe.
-
Journal Title
Journal of Immunology
Volume: 193
Pages: 3803-3815
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Overexpressed HIF-2α in Endothelial Cells Promotes Vascularization and Improves Random Pattern Skin Flap Survival2014
Author(s)
Atsushi Morimoto, Shuhei Tomita, Masaki Imanishi, Go Shioi, Yoshitaka Kihira, Yuki Izawa-Ishizawa, Mitsuru Takaku, Ichiro Hashimoto, Yasumasa Ikeda, Hideki Nakanishi, and Toshiaki Tamaki.
-
Journal Title
Plastic and Reconstructive Surgery Global Open
Volume: 2
Pages: e132
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] 大動脈瘤形成に対する新規抗酸化薬の効果2014
Author(s)
小原 佑介、石澤 啓介、櫻田 巧、戸谷 紘基、長尾 朋子、壱岐 豊、細岡 真由子、今西 正樹、石澤 有紀、木平 孝高、池田 康将、 土屋 浩一郎、玉置 俊晃
Organizer
第53回日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会 中国四国支部学術大会,
Place of Presentation
広島国際会議場(広島県広島市)
Year and Date
2014-11-08 – 2014-11-09
-
-
-
-
-
-