2014 Fiscal Year Research-status Report
ネクチン様分子によるErbBファミリーシグナルの制御機構
Project/Area Number |
26860190
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
水谷 清人 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50559177)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞内シグナル伝達 / ErbB / ネクチン様分子 / Necl |
Outline of Annual Research Achievements |
種々の細胞膜受容体の中で、上皮成長因子(EGF)の受容体の活性制御機構が、1987年に米国のSchlessingerによって最初に解明された。EGF受容体はErbB1, -2, -3, -4の4つのメンバーからなるファミリーを形成しており、正常組織では組織の形成や維持を制御しており、がん細胞では増殖や浸潤・転移に関与している。研究代表者の所属する研究室では、免疫グロブリン様分子であるネクチンを介する新しい細胞間接着装置を発見し、この接着分子が細胞の接着とともに細胞の極性形成、生存、増殖、運動、分化など種々の細胞機能を制御していることを解明している。ネクチンの発見後、生体内にはネクチンに類似した5つのネクチン様分子(Necl-1, -2, -3, -4, -5)が存在することが見出された。そのうち、がん抑制因子として知られていたNecl-2とNecl-4がErbB3と結合し、脱リン酸化酵素PTPN13を介してErbBファミリーの細胞内へのシグナル伝達を抑制することが明らかとなっている。研究代表者は、Neclファミリーによるがん抑制機構を解析する過程で、PTPN13を介さない別のがん抑制機構を見出した。 平成26年度は、Neclのどのドメインががん抑制因子としての機能に重要かの検討を行った。その結果、細胞内シグナル伝達を抑制するドメインの候補をいくつか見出した。また、これらの領域と結合するErbB側の領域探索を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、PTPN13非依存的ながん抑制機構を担うNecl側のドメインの候補を見出すことができた。また、これらの領域と結合するErbB側の領域探索にも着手しており、NeclとErbBの結合様式とその細胞内シグナル伝達抑制機構の解明も順調に進展することが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成26年度に見出したNecl側の候補領域をさらに絞り込み、細胞内シグナル伝達抑制に必要最小限の領域の同定を進める。同定された領域を培養細胞で作製するか、フラグメントが小さければペプチドを人工合成し、がん細胞の運動に対する阻害効果などを検討することで、NeclによるErbBファミリーの活性制御機構を解明し、その成果をがん細胞の運動・浸潤・転移の解析に活用することを試みる。
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