2015 Fiscal Year Research-status Report
グラム陰性菌における外膜小胞の産生誘導メカニズムの解明
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26860293
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村瀬 一典 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 特定助教 (40710869)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 外膜小胞 / グラム陰性細菌 / HlyF / 国際情報交換(フランス) |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸菌をはじめとする多くのグラム陰性菌は外膜小胞(OMV)を産生する。OMVは、内包する様々な細菌由来分子を宿主細胞へ輸送しうることが報告されており、細菌の生存戦略においては、一種の飛び道具となる。しかしながら、詳細なOMV産生メカニズムは未だ解明されていない。 申請者は、フランスでの研究において、腸管外病原性大腸菌の保有する大型の病原プラスミド上にコードされているヘモリジンF遺伝子(HlyF)が、外膜小胞の産生に関与していること、他の細菌にもHlyFホモログが存在すること等を明らかにした。本研究では、上記の先行研究の成果を基に、OMVのワクチンへの応用を念頭において、HlyFによるOMV産生誘導メカニズムの解明、HlyFホモログの機能解析、OMV産生条件の至適化、OMVを介した細菌由来分子の宿主細胞への取り込み経路の解明を試みる。 OMV産生メカニズムについて、HlyFによるLPS(リポ多糖)やペプチドグリカンへの修飾等がOMVの産生誘導に関与している可能性を考え、まず、HlyF導入・非導入株におけるLPSの糖鎖解析を実施した。その結果、LPSのリピドA部分において、両者間で大きな分子質量変化が確認され、OMVの産生誘導に寄与しているものと考えられる。しかしながら、未だ分子質量に変化を及ぼす要因の特定、およびその詳細なメカニズムの解明には至っておらず、今後も継続して解析を進めていく予定である。 なお、これまでの研究成果について、フランスの研究グループとともに米国感染症学会の学術誌であるJournal of Infectious Diseasesに報告した (Murase K, Martin P, Porcheron G, Houle S, Helloin E, Penary M, Nougayrede JP, Dozois CM, Hayashi T, Oswald E. 2015. Hlyf Produced By Extraintestinal Pathogenic Escherichia Coli Is A Virulence Factor That Regulates Outer Membrane Vesicle Biogenesis. J Infect Dis. 213(5):856-865.)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度に実施予定していた「HlyFのepimerase活性の検討」については、epimeraseドメイン (YxxxK) の部位特異的変異株を作成し、野生株と比べOMV産生量の著しい低下が確認された。また、昨年度の成果として、HlyF導入・非導入株間におけるLPSの糖鎖解析から、LPSのリピドA部分において両者間で大きな分子質量の変化が確認されたが、その要因の特定には至っていない。 また、その他に予定していたRNA Seq解析による「遺伝子発現プロファイル」については、当初の計画より遅れているため、引き続き次年度に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に沿って、引き続き、「HlyFによるOMV産生誘導メカニズムの解明」、「HlyFホモログの機能解析」、「OMV産生誘導条件の至適化」等について実施する。特に、「HlyFによるOMV産生誘導メカニズムの解明」については、LPSの糖鎖解析によりHlyF導入・非導入株間でリピドA部分の違いが明らかとなったため、引き続き、RNA Seq解析による遺伝子発現プロファイルを実施し、OMV産生に至る膜構造等の変化およびその関連因子の同定を試みる。上記のOMV産生に影響を及ぼす膜構造変化やその機構等が明らかにされ次第、「OMV産生誘導条件の至適化」の再検証を実施する。
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Causes of Carryover |
平成27年度に予定していたフランス(共同研究先)での研究打ち合わせは、先方の代表者が別件で来日し、その際に打ち合わせを実施したため、平成27年度に計上していた外国旅費分(350千円)が未使用となった。また、同年度に計上していた国内旅費2件分のうち、1件は実験の都合で参加できず未使用(70千円)となり、投稿料及び英文校正料(80千円)は共同研究先の負担となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の実施予定計画に基づき、計上した試薬・プラスチック器具類の購入、サンプル調整費に使用する。 また、平成27年度未使用となった外国旅費については、平成28年度に使用する。
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