2016 Fiscal Year Research-status Report
児童虐待予防を目指した個別支援ツールの標準化と評価:ネグレクトに焦点をあてて
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26861988
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
有本 梓 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (90451765)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 児童虐待 / ネグレクト / 個別支援 / 尺度開発 / 公衆衛生看護 / 保健師 / ツール開発 / ケアマネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
児童虐待予防には母子保健事業を通じた早期発見と継続的な個別支援が欠かせず、特にネグレクトのリスクのある事例では、家族の多様な健康問題・家族問題・生活問題を特定し、問題に応じた対応を行う必要がある。しかし、根拠に基づいたネグレクト予防のためのアセスメントシート等の個別支援ツールは必ずしも十分とはいえない。本研究は、保健師の効果的な児童虐待の発生予防活動とその評価を可能とするため、ネグレクトの予防と発見に焦点をあてた保健師の個別支援ツールを標準化することを目的とした。 平成28年度は、早期支援が特に必要であり保健師が接点を持つ機会が多い、乳児とその家族への「ネグレクトサインアセスメント尺度(乳児版)」(以下、NSA)を開発することとした。1)NSA暫定版の作成・洗練、2)NSAの信頼性・妥当性の検討に関するアンケート調査の計画・実施を行った。1)では、平成26・27年度に作成した項目案に、インタビューデータ分析、文献レビュー、研究者からの意見を加えて、項目追加、表現修正を行い、NSA暫定版50項目(3件法)を作成した。2)では、NSAの信頼性ならびに妥当性について検討するための無記名自記式質問紙調査(郵送法)を実施した。対象は全国1,734市区町村の母子保健担当部署に勤務する常勤保健師のうち、ネグレクトが疑われる在宅で生活している乳児とその家族の個別支援経験がある保健師とした。質問紙を市区町村単位に郵送し、対象者(各自治体1名)による個別返送により回収した。506通の返送があった。 今年度の成果の意義は、ネグレクトサインアセスメント尺度(乳児版)の妥当性・信頼性検証のための全国調査を実施できた点である。本調査は、母子保健分野におけるネグレクト疑い事例に関する初の全国調査であり、実態把握の点でも意義がある。今後の課題は、分析を追加し尺度開発に関する成果発表を行うことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画で挙げていた保健師による個別支援ツール改良版の活用可能性の検討とプロセス評価に向けて1)ネグレクトの予防と発見に焦点をあてた個別支援ツールであるネグレクトサインアセスメント尺度(乳児版)案の洗練、2)ネグレクトサインアセスメント尺度(乳児版)の妥当性・信頼性の検討に関する全国の市区町村保健師を対象としたアンケート調査の実施をおおむね予定通り進められた。ただし、分析の追加および成果発表のため、29年度まで補助事業を延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、ネグレクトの予防と発見に焦点をあてた個別支援ツールの標準化と活用可能性の評価に向けて、ネグレクトサインアセスメント尺度(乳児版)に関する自治体保健師への本調査の結果の分析を追加してより詳細に行い、尺度の妥当性・信頼性の検討を行い、活用に向けた成果発表(国際学術雑誌への投稿および学会発表)を行う。
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Causes of Carryover |
28年度に、標準化した個別支援ツールアセスメント項目に関して国際学術雑誌への投稿および国内外での学会発表を予定であったが、研究遂行する中で、目的である個別支援ツールの標準化をより精緻に達成するためには、データ分析を追加し、より精緻な分析結果を得た後に投稿と発表を行う必要性が生じたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度に実施した質問紙調査で得られたデータの追加分析のためにデータ分析などに関する委託費に使用する。また、国際学術雑誌への投稿および国内外での学会発表などの成果発表のため、旅費、学会参加費、英文校閲などに関する委託費、投稿料、掲載料、別刷代、報告書の印刷費、郵送費などに使用する。
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