2014 Fiscal Year Research-status Report
がん抑制遺伝子Rbによるミトコンドリア代謝制御を介した腫瘍抑制メカニズムの解明
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26870443
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
竹林 慎一郎 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50392022)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞老化 / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近、我々は、HRas(がん遺伝子)誘導時におこるミトコンドリア好気呼吸の上昇にがん抑制遺伝子Rbが関わっていることを明らかにした。本研究では、Rb制御の下流にあり、これまで不明であったミトコンドリア活性化の鍵となる代謝経路の同定とそれに関連する代謝酵素の発現調節メカニズムの解明を目指す。本年度は、当初の計画通りメタボローム解析を行い、Rb依存的に変動する代謝産物の同定を試みた。その結果、解糖系を中心とする複数の代謝産物がRb依存的に増加していることを確認した。この結果と、すでに得ていたRb依存的な代謝遺伝子発現データを照らし合わせ、両者の変動がリンクしているものを抽出した(一次スクリーニング)。さらに、Rbの標的候補として絞り込まれた個々の代謝関連遺伝子に対するsiRNAノックダウン実験を行っている。すでに調べた複数の代謝関連遺伝子のノックダウンにより、実際にRb依存的なミトコンドリア好気呼吸の上昇がキャンセルされることを確認した(二次スクリーニング)。これまでの実験結果から、解糖系の活性化が下流のミトコンドリア好気呼吸の上昇に特に重要であると現時点では推測している。実際に、フラックス解析装置を用い解糖系の活性を測定したところ、Rb依存的な解糖系の活性化がおこっていることを確認できた。また一方で、同定した代謝関連遺伝子の発現制御メカニズムを詳しく調べるために、ChIPなどのクロマチン構造解析実験の条件検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)トランスクリプトーム解析およびメタボローム解析から複数の候補遺伝子を抽出することに成功し、2)それら候補遺伝子のノックダウン実験により実際にミトコンドリア好気呼吸の上昇に関与していること明らかにできた。また、ミトコンドリア好気呼吸の上昇のキーとなる代謝経路(解糖系)を同定するに至った。以上のことから、平成26年度の目標はおおむね達成できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
一次スクリーニングで抽出した残りの候補遺伝子についてもノックダウン実験を進める(すでにRb依存性を確認した解糖系以外の代謝経路がミトコンドリア好気呼吸上昇に関与するかを含め、引き続き検証を進める)。同定したRb依存的な制御をうける代謝遺伝子に関して、クロマチン構造解析を行い詳細な発現制御メカニズムを明らかにする。また、マウスを用いた実験も行うことで、個体や組織レベルでも同様の現象(Rbによるミトコンドリア好気呼吸の制御)が起こっているのか、またその生体内での意義について検証を進める。
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Causes of Carryover |
解糖系の活性化が下流のミトコンドリア好気呼吸の上昇に特に重要であることが推測されたので、候補遺伝子の絞り込みを効率的に進めることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
解糖系以外の代謝経路に関与する候補遺伝子も得られているので、これらのミトコンドリア好気呼吸への寄与を検証する必要がある。そのためのノックダウン実験に使用する。
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Research Products
(4 results)