2014 Fiscal Year Research-status Report
アイヌ近現代思想史の構築:近代性を軸とする歴史的・理論的研究
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26870554
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Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アイヌ / アイヌ思想史 / 近代 / 思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は下記の 3 点を考察を柱として、アイヌの近現代思想史の全体像に迫ることを目標としている。1)近現代におけるアイヌ思想史の系譜構築:蝦夷地の内国化から現在までを「近現代」の一画期として、同時代に対してときに異議申し立てな がら貢献してきたアイヌの著述家や知識人たちの思想の系譜を構築し、そこから得られる知見を繰り上げて考察していく。2)アイヌ近現代思想史の日本思想史研究上の意義:1の成果を踏まえつつ、近現代におけるアイヌに対する差別およびアイヌの社会的差異化の問題が日本における近代性にとっていかに不可欠だったのかを明らかにし、日本近現代思想史研究において 軽視されてきたアイヌの著述家や知識人の知的作業が日本における「近代」を考える上でどうしても抜かしてはならないのだという事実を明確にしていく。3)世界規模の思想課題としてのアイヌ近現代思想史:近代的権力の連接の決定的な地点において生産されてきた人々同士の間に存在する、ある絡み合いを示しているものとして、自らが周縁化された存在として近代世界に組み込まれているのだという感覚が挙げられる。世界各国において、このような経験に対する考察は黒人思想史、ユダヤ人思想史、 その他のマイノリティ研究やポストコロニアル研究として展開されてきた。こうした海外の研究状況と結びつけることで、本研究はアイヌ研究から世界に提示できる思想の課題を追究していく。本年度は、書籍などの必要な基礎的情報の整備と研究上に必要なIT関連機器の補充的整備を行い、研究対象となる著述家の自筆原稿などの資料調査を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の研究計画通り、戦時・戦後世代のアイヌの著述家たち、なるべく多種多様な文脈において活躍していた人々の著作の基礎的整備と再検討作業を中心に研究を進めた。なお、2月に1度札幌で資料調査を実施した。本年度の資料・現地調査は1度にとどまったが、次年度は当初の計画に合わせてその回数を増やし、研究ワークショップおよび報告発表を行い、研究成果を日本語と英語の両方の言語において発信していく。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、拙著論文「移民と先住民のあいだ」の主要テーマの一つをさらに掘り下げるかたちで、26 年度に得られた知見を、今度は戦争またはその中のアイヌ兵の置かれた状況から再考していく作業に集中する。 物品費の主な用途は、アイヌ史研究および先住民族研究、思想史研究の関連図書で計上する。旅費は、研究ワークショップの開催、北海道での文書資料調査のための出張に使用し、謝金については、ワークショップ参加者による専門的知識の提供への対価として計上する。その他、文献複写費、通信費、会議費等を計上する。27年度が最終年度であるため、研究成果を国内外のそれぞれの研究状況と結び付き、成果を社会的に還元するための費用として成果公開費を計上する。
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Causes of Carryover |
本年度に計画していた研究ワークショップが希望参加者の都合により実行できなかった。これにより参加者各自の旅費・謝金は発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は国内参加者に限定して研究ワークショップを東京で行う。参加者3名の旅費・謝金は関西および札幌1泊2日1名X1回[100千円]を計上する。
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